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【連載】日本のロングトレイルを歩く vol.15 ぐんま県境稜線トレイル踏破録:第三章「4ヶ月越しの後半戦はー7℃の世界! からの湯めぐりで締め」

(2018.12.04)

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 この道迷いポイントを過ぎれば赤石山までは明瞭だった。赤石山に着いて岩によじ登ると、ブワッと足をすくわれそうになった。ものすごい風だ。この日の予報は風速15m以上。雲が物凄い勢いで左から右へと流れていき、絵の具で染めたような蒼い大沼池が現れた。身体を張って強風を受け止めている樹々は雪化粧。

赤石山の西にある大沼池

暴風で鼻水も凍る勢い

まさか樹氷を見ることになるとは思わなかった

氷点下の山から標高1800mの高山温泉郷、万座温泉へ

 赤石山まで来れば、鉢山、横手山とすぐに辿りつくイメージでいたが(実際、地図で見ると近く見える)、結構時間がかかると思った方がいい。相変わらずマッドなトレイルに足を取られながらシングルトラックを抜けるとスキー場を登ることになる。スキー場のコースを登るって、「リフトなら一瞬なのにな~」とか「スキーで滑る時は楽々なのにな~」とか考えちゃって余計に長く感じる。気温が低く風が強かったこの日はスキー場の綺麗に揃った芝が真っ白で、だだっぴろいゲレンデでひとり、暴風を受けまくりながらのろのろ歩く姿は滑稽だったと思う。

 途中で駐車場が見えて、よっぽど道を逸れてロードで下りてやろうかと思ったけれど、滑稽な人をやり抜く意志で突き進む。夏ならゴロンと転がってひと休みすればきっと気持ちいいだろう。横手山頂ヒュッテの名物焼きたてパンの誘惑も振り切って、渋峠までのゲレンデをリフトに沿って駆け下りた。冷たい空気が喉から肺まで届いてヒーヒー音を立てる。それでもテントや寝袋を持っていない後半の荷物は、ピクニックくらいの軽さで、羽根が生えたような気分だった。

渋峠ホテルは半分ぐんま、半分ながの

境界にねっころがって自撮りしようかと思ったけど、案外次々とカップルの乗ったラブラブカーが通る

ので、控えめな足元でどうかゆるしてください

 渋峠からはしばらく国道R292を歩く。草津白根山の麓で危険区域1km圏内のギリギリにコースがあるため、火山活動が活発になると歩けなくなる可能性もある。渋峠にあった電光掲示板の現在の気温は「ー3℃」。下りてきて-3℃なら、さっきはー7℃くらいだったんじゃないだろうか。

道行く車が不思議そうな顔でわたしを見る

がしかし、わたしも負けじとこんな天気の日にビュースポットにドライブに来る人達を不思議な顔で見てみたりする

 山田峠からロードをひと登りしてカーブを曲がると、トレイルに入る場所があった。駐車場が目印と聞いていて、地図には(P)マークが付いているのだが、これを駐車場と認識できるかどうかが、通り過ぎずにトレイルに入れるかどうかの運命の分かれ道だ。そのまま気付かずロードをがんがん進むと、トボトボ引き返すことになる。

駐車場らしいがPマークの看板などは特になく、なかなか難易度が高い

ここにこそ、「ぐ」マークを!!

 この日最後のトレイル、山田峠~万座温泉区間の数キロは、400~500mほど登ればあとはほぼフラットと下りだった。(たぶん)景色のいいトレイルで、(たぶん)草津白根山が良く見えて、(たぶん)今日泊まる万座温泉を見下ろすことができて、(たぶん)心躍る場所だ。

目を細めればうっすらと見える温泉街らしきもの

 最後は木段のを下れば、待ちに待った万座温泉に到着。温泉らしい景色が迎えてくれる。いや~たまらん、この光景。あちこちで湧き上がる湯気。鼻を刺すようなツンとした硫黄の香り。

 今宵の宿は万座高原ホテル。ホテル内に遅くまで開いている売店があるということで補給のことを考えてここを選んだ。それに宿泊客は24時間入浴できるっていうんだから最高じゃぁないですか。貧乏旅、素泊まりで何の問題もない。風に揺れる避難小屋でおじさんと2人で身を寄せ合った(?)前半とのコントラストが酷い。

いかにも温泉街っぽい雰囲気だ

あっちもこっちも温泉! 温泉!

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ライター
中島 英摩

ライター。テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通う。趣味が高じてライターとなり、トレイルランニングの取材・執筆をメインに、国内外の長距離レースにも出場している。特技は走りながら取材すること。

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