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「自然を求めて田舎暮らし」を考えている人は必読、 移住地探しで聞くべきことは?

2023.04.10 Mon

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

 都会から田舎への移住。アウトドア派にとって、自然のそばでの暮らしはもちろん、危機管理の点でも魅力的です。災害でインフラが止まっても、自然豊かな移住先であれば水や薪、食料は何とかなるもの。

 しかし、そこには地域社会がある。「集落の人々とうまくいかない」「さらなる移住を余儀なくされた」という移住体験談は珍しくありません。
 住みよい移住先をどうやって見つけるか。先日、某田舎(A集落とする)の取材でそのヒントに出合いました。それはA集落の住人がつくった移住者向けの小冊子で、集落の習わしを——移住者が必ず向かい合うあれこれを記してあります。移住希望者が事前に知りたいことを、田舎側が先回りして答えている。

 このA集落の知恵に、私が移住者取材で得た知見を加えて、「移住候補地で聞くべきこと」をお届けしましょう。
まずは、参加を求められる地域活動のことなど

 義務ではないが、古くからの共同作業が田舎にはある。水路や農業用ため池の清掃、道沿いの草刈りなどだ。そういう慣習は、「居住地やその周辺で、昼間の定職(農業など)に就く暮らし」が前提だったりするので、フリーランサーや二拠点生活の人などは注意が必要。地域活動にほとんど参加できない、ということにもなりかねない。地域活動の頻度や時期などは真っ先に聞いておこう。
ハレの日、ケの日

 田舎には祭りがつきもの。時期と内容、参加は自由かなどを押さえておきたい。

 そして、念のため確認したいのが葬儀。昔は田舎でのお葬式といえば自宅葬が多く、となり近所で協力して祭壇設営から食事の用意までした。もし、今もそんなお葬式をする集落であれば、移住者もお手伝いの頭数に入るのだ。

消防士にあこがれる人は好都合!?

 若者が少ない田舎で避けられないのが消防団への加入。まずは、会合や訓練の頻度をチェック。消防訓練とは関係ない「親睦会」が多い消防団もある。自分の生活に無理が生じそうなら、その地域への移住を再考したほうがいい。

 また、あなたが「曲がったことは大嫌い」なら、消防団の会計とか、消防団員への報酬がきちんとしているかも、うまく聞き出したい。消防団員への報酬の一部を消防団内でプールしている、なんてこともあるかもしれない。

ゴミを出しておしまい、ではないことも?

 収集場所にゴミ出すだけ、と限らないのが田舎。たとえば、私の地区の住人には「立ち番」という役が課せられる。粗大・資源ゴミの収集日には、規定外のゴミを出されないように監視するのだ。田舎に多い老人は早起きなので、ゴミ出しも早い。真冬の未明からの立ち番は体に悪いし、立ち番のために自分の予定を変えなければいけないことも。

 また、行政は「生ごみはなるべく自宅で処理」と言っているのに、自治会では「生ごみは出すな」という空気になっている例も。行政の指針と自治会の決まりが微妙にずれていることはままある。

他人の家財整理も自分の仕事!?

 田舎への移住で難儀なのが住居探し。「先住者の家財やゴミが残置されたまま」という物件でも、見つかるだけましだ。むしろ気にしたいのが、それら家財とゴミを持ち込める収集センターがあるのか、なるべく近隣に、である。必ずチェックしておこう。
そしてお金のことも忘れずに確認——まずは自治会費(町内会費)

 ここで大切なのは、移住候補地の自治会費を調べること。市内・町内の大体の相場や平均では不十分。ひどい例だと 通りの向こうとこちらで自治会費が大きく異なることも。これについては記事の最後のほうでも触れます。

「信仰の自由」に抵触する!?

 地域の神社の運営費「社費割」が課せられる場合もある。例えばA集落では年に5500円/戸、さらに神社の祭りごとに200円/戸の寄付を求められる(一方、A集落では町内会費がない)。自分の信仰との兼ね合いで気になる人もいるだろうなあ。でも、このような習わしを受け入れないと、その地域での暮らしはきつい。
通りの「こちら」「あちら」が家計に影響!?

 私がよく知る某地域。そこの秋祭りはけっこう派手で、金糸銀糸の立体刺繍(龍など)で飾られた山車(だし)が、地域の神社ごとに何台も練り歩いていく。山車の値段は数千万円~1億円で、これが市内に約110台ある。

山車を所有するのは自治会だ。それぞれの自治会の規模は20~400名ぐらい。その人数で豪華な山車を維持管理するとなれば、言わずもがなである。

 しかし、同じ市内の自治会でも、山車を所有してなければその負担もない。移住先が数メートルずれていれば……なんてこともあるのだ。
情報は現場にあり

 さて、以上のような情報を得るときに肝心なのが、「移住候補地の住人に聞く」ということ。移住地探しでは自治体の担当者が世話を焼いてくれるけど、各集落の事情のすべてを把握しているとは限らない。移住候補地を下見して、自然環境と古民家物件に一目ぼれで移住を決めると、その先に落とし穴が待っているかもしれません。

 


(Akimama記事「都会よ、さようなら~地方をめざすアウトドアピープル向け、移住地探しのツボ」もご一読ください)

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

四国の瀬戸内海暮らし。仕事は自然・旅系ライター&フォトグラファーで、生きかたはバックパッカーでリバーランナー。著書はラフティングガイドたちの1年を追った『彼らの激流』(築地書館)。

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