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あの巨匠に聞く、大型バックパックの“フィッティング”のお話

(2015.07.09)

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「GREGORY」の創業者、ウェイン・グレゴリーさん。60歳を過ぎた今でも、14歳の時と同じ情熱で理想的なバックパックを作り続けている。

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若き日のウェインさんと、妻のスージーさん。1970年頃は皆、こうしたフレームザックを背負っていた。もちろんフィッティングには気を遣っているものの、男女差や体格差はほとんど考慮されておらず、そういうものだと考えられていた。

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現在のBALTOROの背面構造。荷重をバランス良く分散させながら、荷物の重心を骨盤の中に引き込むようにさまざまな工夫がなされている。

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「レスポンス A3 システム」のカギとなるハーネスの取り付け部。ピボットを介してバックパネルに取り付けられており、ハーネスは背負う人の肩のラインに沿った理想的な角度に落ち着くことになる。

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グレゴリーの核である独自の背面システム「レスポンスA3サスペンション」

パックパックを選ぶときにはどうしてもその形や色、容量といった分かりやすい「表の顔」ばかりを見てしまいます。けれど本当に大切なのは背中やベルトといった、身体に直接触れる部分。目立たない「裏側の顔」こそ、密着度や背負い心地、そして疲れにくさに繋がっているのです。
GREGORYのパックパックを例に、バックパックの
背負い心地を決める要素を考えてみましょう。

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“見た目もいいけど、まずは背負い心地がいい” 、“背中だけが重いんじゃなくて、身体全体に荷物の重みが分散している。本当に、荷物を着ているようだ”。形がカッコいい、色がキレイといった見た目ではなく、最初に使い心地が挙げられる。これがGREGORYの特徴です。

 1977年、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴで「GREGORY MOUNTAIN PRODUCTS(グレゴリー・マウンテン・プロダクツ)」が誕生しました。今日の「GREGORY」の前身です。

 創業者のウェイン・グレゴリー(Wayne Gregory)は14歳の時に初めて木製のフレームザックを手作りで仕上げました。ボーイスカウトの課題として挑んだ作品は丁寧に作られており、ウェイン自身が創意工夫を凝らしてものを仕上げていくこと特別な才能を持ち合わせていたことを物語っています。

 「単にものを運ぶだけではなく、快適に運ぶことができるバックパック。長い時間運んでも、重いものを運んでもムダに疲れない旅の相棒。そういったバックパックを目指していたんだ」とは、14歳のころからウェインが思い描いていたイメージ。

 そのために必要なのは、バックパックの重みがバランス良く身体の芯に乗ってくること。ウェインは早い時期からそのことに気づいていたのだと言います。
「荷物の重心が身体の外にあるのではなく、その重みが身体の中にまで入り込んで、腰の軸にスッと乗ってくる。そんな背負い方ができれば、ずっと効率よく疲れず、今まで以上にアクティブに動けると考えていたんだよ」

 それまで大型のバックパックは腰骨を包み込むヒップベルトでその重さの大半を支え、ショルダーハーネスの長さを調整することでフィット感を得ようとしてきました。しかし「背負い心地」にこだわってきたたウェインは、問題の本質を見抜き、解決すべきはショルダーハーネスの「取り付け位置」であることに気づいていました。

 つまりウェインにとってはヒップベルトとショルダーハーネスの位置関係を表す「サイズ」こそが、解決すべき要点であり、目指すゴールに向かう道だったのです。そこで当時のGREGORYの社員ら、多くの人をサンプルに身体のサイズを測り、最終的に「トルソー」と呼ばれる
『第七頸椎から、腰骨最上部の水平線が脊椎骨と交わった部分までの長さ』
を測りました。こうした解剖学的な基準に沿って、ヒップベルトとショルダーハーネスの理想的な位置関係を明らかにしたのです。

 こうしてトルソーのサイズに合わせてショルダーハーネスの位置を調整し、身体の大きさに合わせてヒップベルトの位置や長さを自由に調整できるバックパックが生み出されました。

 現在、GREGORYのバックパックは同モデル同容量であっても、2〜3サイズの背面長を用意しています。これは、バックパックのサイズは身体の大きさに合わせて選ぶべきであり、それは背負い心地に直結するというウェインの考えを形にしているからなのです。

 またGREGORYでは男性用・女性用のバックパックをデザインしていますが、それは単にサイズの違いだけに留まりません。

「たとえば女性用のヒップベルトは男性に比べて大きな骨盤を包み込むよう、ベルトのサイズも取り付け角度も独自のもの。またショルダーハーネスはバストの膨らみを避けるよう、独特のS字を描いている。こうしてGREGORYではサイズだけでなく、性差による身体的特徴まで考慮したラインナップになっているんだ」

 こういったサイズとフィッティングに関する取り組みの最先端は、大型バックパックのBALTOROとDEVAに活かされています。その一例が「レスポンス A3 サスペンション」と呼ばれるシステム。A3は「オーチマチック アングル アジャスト」の略で、ショルダーハーネスとヒップベルトの取り付け部分をピボット式にしたことを意味します。これによって各ハーネスは取り付け部を支点にして自由に角度を変えることができるようになり、体型と動きに追従した最適のポジションを自動的に実現することが可能になりました。

「レスポンス A3 サスペンション」はこのほか、6つの要素によってこれまで以上のフィット感をかなえています。

■ランバーパッド/バックパックが腰に吸い付くようにグリップ。歩行時のズレを抑えて一体感を向上。
■ウィッシュボーンフレーム/バックパック背面にフレームを内蔵。荷物の重さをヒップベルトに導く。
■ウルトラクラッシュ・バックパネル/背中が当たる面に通気性の高いEVAフォームと、グリップの良いシリコン素材をレイアウト。快適な背負い心地を実現。
■ランバーチューン/個人差がある腰下部の形状に合わせて取り外して調整ができるEVAフォーム。
■クィックスワイプ3D/ショルダーハーネスとヒップベルトは、人間工学に基づいて立体的な曲線で成形。身体との一体感を高め、理想的な加重配分をかなえる。
■ヒップベルト構造/必要な部分をサポートして快適なフィット感をうみだす。

 これらすべてのテクノロジーは、バックパックの背面に集中しています。サイズもサスペンションシステムも、創業者のウェインが長くこだわってきたのは背面です。色や形ではなく、人の身体と直に接する部分。そこにこそバックパックの本当の性能を左右する要素が潜んでいるからです。

「レスポンス A3 サスペンション」を得て、GREGORYのバックパックはさらに進化を遂げました。それは単にベストフィッティングをもたらすだけではなく、これまで以上に厳しい道でもアクティブに歩き、長期間のハイクさえもさらなる余裕でこなす背負い心地を手に入れたということなのです。

 
 
ライター
Akimama編集部
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