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【連載】日本のロングトレイルを歩く vol.6 ロングトレイルにマッチしたシューズとは?! ~X ULTRA 3 MID GORE-TEX

2018.07.25 Wed

森山伸也 アウトドアライター


 ロングトレイルとは、ピークハントにこだわることなく、フィールドの自然、地形、地質に目をとめながら、そこに住む人々の習慣や文化、歴史に触れながら歩く長い道のことである。それゆえに、さまざまな路面状況がハイカーを待ち構える。一般的な登山道から、砂利の林道、湿原の木道、昔の風情を残す石畳、車が走るアスファルトまで。

 がっちりしたつくりでサポート力が高いオールレザーの登山靴では歩きにくい。かといって、フレックスが効いた柔らかいローカットのシューズでは心もとない。ましてや、スルーハイクをめざすとなると、キャンプ道具や食料など重い荷物を背負っての歩行となるため、自身の筋力とシューズを天秤にかけて、己と相談することも必要になってくる。
坂巻温泉川津屋から結東集落へ続く古道を歩く。明るい雑木林で思わず深呼吸。秋山郷トレッキングコースの一区間だ。
 ロングディスタンスハイキングにおけるシューズの選択は非常にむずかしく、装備の重さや気候、体調、体力の変化に伴って慎重にならざるを得ない装備ひとつである。

 たとえば、信越トレイル80㎞をキャンプ道具を背負って4泊5日でスルーハイクするとした場合。最適と思えるシューズをAkimama編集部でピックアップしてみた。
サロモン/X ULTRA 3 MID GORE-TEX
16,500円+税 カラー:4色(メンズ、ウィメンズともに) サイズ:25.0-28.5㎝(メンズ)、22.0-25.0㎝(ウィメンズ) 重量:448g(27㎝・片足)

 防水透湿素材ゴアテックスを採用し、全天候下において快適な足元を維持するハイカットモデルだ。足首をサポートする力強さと、地面をリズミカルに蹴り上げる軽快さをバランスよく突き詰めたハイキングシューズで、日帰りハイキングからキャンプ道具を背負ったロングディスタンスハイキングまで、幅広く活躍する本格派モデルである。日本人の足型にあったラスト(足型)を採用したベストセラーシューズが、今季さらなる改良を加えて、新しく生まれ変わった!

 それでは、細かいディテールを見ていこう。

シューズの前方正面から撮影。ソールがつま先部を包み、岩などからつま先を保護している。
 くるぶし部分をキュッと締め上げたクビレのあるフォルムが特徴的だ。足を入れた瞬間から高いフィット感を得られる。重い荷物を背負ったときでも足首をくじかないよう左右にブレない高いサポート力を持つ。それでいて、前後の動きにはフレックスを残し、軽快な足さばきを可能にしている。
ヒールカップは、堅牢すぎず、ヤワすぎず、適度なサポート力。
 シューレースを締め上げると、ヒールカップがぐいっと前方へと引きつけられるような構造で、フィット感が高い。軽量化と通気性を高めるため、ヒールカップのメイン素材を肉抜き加工している。
履き口(トップライン)のクッションはかなりボリューミーだ。
 繊細なアキレス腱と脛をストレスなく、隙間なく包み込む履き口。石や砂が入り込むトラブルも少なくなるデザインだ。またタンの部分が厚いので、下りのときに押し付けられる脛への負担も少ない。
アウトソールは、サロモンがテストを重ね、オリジナルで開発した独自構造だ。
 2種類の異なるラバーとパターンが、強力なグリップ力を発揮する。ぬかるんだ泥でも、毛の長い草地でも、深いパターンがよく噛み、滑りにくい。足裏で踏み込んだ力に反応するレスポンスが高いので、前後、左右への動きがすばやくできる印象だ。
苔むした岩でも高いグリップ力を発揮してくれる。
 アウトソールとミッドソールの間にサロモン独自の軽量&高機能シャーシを配置しているので、ソールにネバリがある。その反発力で、踏み込んだ力を逃さずに推進力に変える。またシャーシを入れることで、剛性が備わり岩場やアスファルトなどの硬い地面で高い安定性を発揮する。
シューレースを上まで結ぶと、かかと、甲、土踏まず、アキレス腱などが一体となるようなフィット感が生まれる。
 サロモンのハイキングシューズといえば、クイックレースが有名だが、重い荷物を背負ったロングディスタンスハイクを想定しているため、強度が高いレギュラーレースを採用。断面が丸いレースは、滑りがよくすばやく、確実に結ぶことができる。

 ライニングにはゴアテックスを採用し、雨や風は通さずに、内側からのムレは逃す全天候に対応した本格登山仕様だ。
履いた瞬間に、長く付き合っていけそうな予感が湧いてくる。そんな靴である。
 いいシューズというものは、履いた瞬間に「お、これはいいぞ」と直感的に感じるもの。X ULTRA 3 MID GORE-TEXはまさにそんな印象だった。固すぎず、柔らかすぎず、ほどよいサポート力で足を包み込み、軽くて、足裏のレスポンスがクイックでいい。どこまでも歩いていけそうな気分になってくる。
この連載vol.5でレポートした信越トレイルの延伸区間、15㎞を実際に歩いてみた。
 木製の吊り橋、丸太の階段、アスファルトの車道、急斜面の悪路トラバースなど、バリエーションに富んだ路面状況だったので絶好のテストハイクとなった。
木道もアスファルトもぬかるんだ土のうえも、難なく快適に歩けた。
 足裏で蹴り上げるパワーは、ソールを伝わって路面状況に左右されることなくスムーズに推進力へ。ソールパターンの「人」という文字のような形は、地面に食いついて、ラバーの反発力を生んでいる印象だった。
結東集落の石垣田を見下ろしながら農道のコンクリートの上を歩く。
 ロングトレイルにおいて、車が通るアスファルトやコンクリートは歩かざるを得ないシチュエーションだ。3層構造のソールは適度なクッション性が備わっているので、コンクリートからの反発も気にならず、ストレスなく快適に歩けた。かかと部分のソールラバーはとくに柔らかい素材を用いていて、着地時の衝撃を最小限に抑えてくれた。
湿った落ち葉が敷き詰められた階段を登る。
 落ち葉で滑りそうなシチュエーションだったが、安心してつま先で蹴り上げることができた。彫りが深く、比較的柔らかいソールパターンが、落ち葉の下の大地をしっかり掴んでいた。
見倉トンネルの谷側に残る古道を歩く。急斜面をトラバースする山道だが、整備がいきとどいていないので、土砂が大雨で流された箇所も。
 アウトソール全面が大地を捉えられない(ソールの内側、あるいは外側だけが地面を噛んでいる)状況でも、左右のブレに対するサポート力が高いので安定してトラバースできた。ソールに内蔵されたシャーシが、抜群の安定感を生んでいたのだ。
古道から山道、アスファルトへ。今回はデイハイクだったが、5日分のキャンプ道具を背負っても、安心して歩けるサポート力と剛性を持ち合わせていた。
 さまざまな路面状況を1日歩いてみてX ULTRA 3 MID GORE=TEXに抱いた感想は次の通りだ。

「サポート力と剛性がそこそこあるのに、なんでこんなに軽いのだ?」

 トレッキングシューズにおける軽量化と剛性は、相反する機能である。どちらかを際立たせるには、一方を削らなければいけない。だが、サロモンのX ULTRAシリーズは、双方を高めながら高いレベルでバランスのいいシューズづくりを実現している。

 バランスのいいシューズとは、特出した機能を見つけることができない、いわば万能な靴である。ロングトレイルには、このようにさまざまな路面状況に臨機応変に対応するオールラウンダーな万能シューズが適している。

【文=森山伸也 写真=太田孝則】

 

 



 
 
日本のロングトレイルを歩く vol.5 信越トレイル80㎞が苗場山へ延びる!!

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