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チタンクッカーで焦がさず炊飯。100均マットで「貧乏コジー 」作ろうぜ

2019.04.18 Thu

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

 運べる荷物に制約がある旅では「干し野菜」を活用している。野菜は干し上げると生の時の重量の1/10程度の重量になり、水で戻せばカレーでも味噌汁でも、ほとんどの料理に展開できる。安い時に作っておけばフリーズドライよりも経済的だ。
登山にキャンプに防災に。軽くて美味くて日もちする「干し野菜」を干しなさい!

 軽くてうまい干し野菜の唯一の欠点が、戻すのに時間がかかること。山では燃料を節約したいので、ガンガン茹でて強制的に戻せない。食事の前に計画的に水で戻さなくてはいけない。

 夕食の準備は昼に始まる。昼食をとりつつ、夜の食事用の干し野菜の袋にちょろっと水を入れておく。野菜が戻りきればよいので、水は少量でよい。こうして戻しておけば、調理時の加熱時間を短くできる。同じ要領で、翌朝に使う野菜は、前の夜に戻しておくようになった。

 そのうちに、お湯で戻すと戻りが良いことに気がついた。しかし、戻すためだけにストーブを長時間使うのは惜しい……。そこで思い出したのが「アンチグラビティギア」のコジー 。クッカーにかぶせて保温し、フリーズドライ食品などを効果的に戻すための道具だ。

 適合するクッカーを無くしてから、長く埃をかぶっていたが、改めて見ればただクッカーのサイズに保温シートを成形しただけのもの。これなら自分でも作れる。

 ということで買い物に出かけたのは近所の100円均一。めざすのはおばあちゃん家の食器棚に敷いてある、あのギラギラしたシートだ。はたして、売り場には今もあのシートが置かれていた。

 用意するのは覆いたいクッカー、ナイフ、両面テープ。写真にはないがこのあとダクトテープも追加した。美しさを追求する人は、テープにアルミテープを使おう。

 ここからはクッカーに現場合わせでシートを切り貼りしていく。今回の銀シートは厚みが2mm弱だったので、全体を4層にすることにした。まずは側面を覆う細長いパーツを切り出す。

 発砲スチロールが出ている面を中合わせにして貼り、ひとまず2層に。さらに両面テープで貼り合わせ4層にする。

 ハンドルが収まる部分はスリットを入れてかわす。2個あるハンドルのうち、片方のハンドルを起点にして側面のパーツを作ると、切れ目の数が少なくスマートに仕上がる。

 続けてクッカーの底をサインペンで写し取り、底面パーツを3枚切り出して接着する。

 最後の4枚目はクッカーの底面よりもひとまわり大きく切り出し、底面サイズの円までハサミで細かく切れ目を入れる。

 筒状に立ち上げた側面パーツの中に、切れ目を入れた底面パーツを押し込み、ダクトテープでぐるりと接着。これでクッカーの鍋側のコジーが完成。

 蓋側のコジーも同様に製作。3枚を蓋の外周と同じ大きさで切り出したら、最後の4枚目は縁を回り込むほどのオーバーサイズで切り出し、マスキングテープで仮止めをする。

 続けて蓋の高さの2倍強の幅でパーツを切り出し、両面テープで仮止め部分の上から覆うように貼り付けていく。

 これで上下を覆うコジーが完成した。製作時間は30分、総制作費も100円弱。野菜を戻すだけでは効果を表現しづらいので、米を炊いてみよう。

 チタンクッカーでの炊飯のコツは、水を少し多めにして、浸水時間を長くとること。米の内部に水が浸み込むと、熱伝導率が上がるのか芯が残りづらくなる。中火で加熱し、沸騰してから3分ほど煮たら、沸騰を維持できる程度に火を細める。水気がなくなり、カニ穴から泡が出なくなったタイミングで火からおろす。

 クッカーが熱いうちに、待機させていたコジーにクッカーを収めて余熱で蒸らす。寝袋やダウンジャケットで包めば、さらに保温効果がアップ。

 10分後、白飯をチェック! 真ん中も周辺部もまんべんなく炊けている。それでは、底はどうか。

 焦げてなーい!

 一般に、熱伝導率の低いチタンのクッカーは炊飯が苦手だが、水気が少なくなったタイミングでコジーに入れることで、鍋底を焦がさず、かつ芯飯にせずに炊き上げることができる。

 何度か計測してみたところ、手持ちのストーブでは1.5食分の炊飯に必要なガスの量は8g前後だった。

 保温調理はもちろん、コジーには料理を暖かいままに保つ効果もある。暖かい季節よりも、寒い季節のほうが断熱による保温効果が高い。100均マットをひとつ買えば、クッカー3セットぶんは作ることができるので、クッカーでしっかり調理する人は作っておいて損はないだろう。

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