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【河津慶祐のALL TIME BEST】シンプルで長く使い続けられるアセンジョニスト・パック

(2019.11.11)

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海、山、川、原野……。
それぞれのフィールドを遊ぶ達人たちに
長年連れ添った相棒を聞く新連載【ALL TIME BEST】
第三弾は、クライミングを愛するアウトドアライター
河津慶祐さんのお気に入りです!

 いつまでも使い続けられる最高なアイテム、それはどんなものだろう。今回の記事を書く前にそんなことを考えてみた。人に聞かれてオススメできるアイテムはいくつかある。でも “ALL TIME BEST” = “いつまでも変わらずいいもの!” とは少し違うのだ。どれも、はやりすたりに負けてしまう。

 あれも違う、これも違う、と悩んでいると、ふと、あるアイテムが頭に浮かび、そして離れなくなった。パタゴニアのクライミング用バックパック「アセンジョニスト・パック」。これだ! これを紹介しようと思った瞬間、 “いつまでも変わらずいいもの!” はどんなものかも分かった気がした。

一ノ倉沢南稜(左)でも、南木曽の岩場(右)でも苦楽を共にした。

 至った結論、それは

「シンプルなものほど長く使い続けられる」

 多機能なものが良くないわけではないのだけは先に言っておこう。しかし、長く、愛着を持って、さらに2代目・3代目と買い続けてしまうものはシンプルなものだったりしないだろうか。

 これは特にクライミングで言えることかもしれないが、壊れる心配が少なかったり、扱いやすかったりと、シンプルなものほど信頼できたりするものだ。

一ノ倉沢南稜フランケ。小容量のサブパックは、日帰りのマルチピッチクライミングや、ベースキャンプがある山行で活躍する。

 さて、アセンジョニストだが、山だけではなく街中で使っている人も見かけるので、見たことがない、という人はあまりいないのではないだろうか。最低限の必要な機能だけを備えたライトウェイトなバックパックだ。2014年に発売し、17年にモデルチェンジをしている。

 このバックパックとは、剱岳のチンネへクライミングに行ったときだって、八ヶ岳の積雪期アルパインルートに行ったときだって、いつだっていっしょに岩に登ってきた。ワイドを登るときは岩に擦り付けられた。時には、荷揚げで宙吊りにされ岩にぶつけられたりもした。そんな雑な扱いでも、へこたれず、健気について来てくれる。

もちろん冬もいっしょ。八ヶ岳の中山尾根(左)も、西穂高岳登山(右)もベースキャンプを張っての山行だった。

 機能はいたってシンプル。サイドやフロントにポケットはなく、フタ部分に小さいものが付いているだけ。一本締めで、さらに雨蓋もないし、見れば見るほど「ただの丈夫な袋」にしか見えない。しかし、この「ただの丈夫な袋」がたまらなくいい! 使いにくいのが一周まわって使いやすい、意味はわからないかもしれないが、こんな感じなのだ。

 さらに細かく説明していくと、アセンジョニストの容量は30ℓと40ℓの2タイプ(前のモデルは25・35・45の展開だった)の展開なのだが、今回 “ALL TIME BEST” として紹介したいのはいちばん容量の小さいモデルだ。

 このモデルはとても好き嫌いが分かれる。パッキングが得意でないと背負いにくくて疲れてしまうからだ。背面パッドは申し訳程度に入っているくらいで、カムとか、ゴツゴツしたクライミングギアを適当に放り込んでしまうと、背中に角がグリグリ当たって痛いのなんの。でも、繰り返すが、ここがたまらなくいい! 自分のパッキングの甘さを感じ反省しつつも、Mっ気が出てしまっているのか、角が当たっていても、それが楽しくて気にせず歩いてしまう。

アセンジョニストはクライマー御用達なので、意図せずしてパーティみな同じってことも。いちばん左のものが現行モデル。定期的に配色が変わるのもいいところ。好きな色のアセンジョニストが発売されると、つい買ってしまう。

 薄い背面パッドのおかげで、サブパックとして使うときには、大きいザックに適当に丸めて突っ込めるところもすばらしい。

 いちばん特徴的なのは開口部だろう。ドローコードを引いたら口がすぼまる巾着型は一般的だが、アセンジョニストは、口を締めるととそのままフタになるようになっており、かんたんに、そしてすばやく閉じることができる。マルチピッチクライミングでは、もたもたと時間をかけていられない。途中の終了点でバックパックをおろし、さっと荷物を出して、さっとしまう。簡素さな作りで、すばやく動作を行なえることが重要となる。

雨飾山の布団菱中央稜。いやぁ、ここのクライミングは厳しかった!

 最後に、ひとつ残念な点といえば、モデルチェンジの際に25ℓがなくなり、最小サイズが30ℓになってしまった点だ。容量が増えるのはいいことなのだが、重さが200g程も増えてしまったのがいただけない。200g増えても軽い部類には違いないのだが、あの、雑に扱える丈夫でペラペラなアセンジョニストに帰ってきてほしい。

《現行モデルのスペック》
パタゴニア
アセンジョニスト・パック 30ℓ

重量:670g
サイズ:S/M、L/XL
素材:5.5オンス・210デニール・リップストップ・コーデュラ・ナイロン86% / ポリエステル14%。ポリウレタン・コーティング加工済み
価格:20,000円+税

アセンジョニスト・パック 45ℓ
重量:920g
サイズ:S/M、L/XL
素材:5.5オンス・210デニール・リップストップ・コーデュラ・ナイロン86%/ポリエステル14%。ポリウレタン・コーティング加工済み
価格:25,000円+税

 
 
ライター
河津 慶祐

高山縦走からクライミング・沢登り・トレラン・バックカントリーと一年中オールラウンドに山を楽しむ。山道具好きが高じてライター・編集者に。典型的な器用貧乏で、やりたい事が多過ぎ、広く浅くになってしまっているのが悩み……。ブログは「Mountain Gear Laboratory

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