• カルチャー

製品包装にプラスチック袋を使う意味(パタゴニアのブログより)

2014.10.13 Mon

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

 今回はやや真面目テイスト。環境のことを考えるスタンス、みたいなお話。

 ちょっと古い話だけど今年の8月、パタゴニアのブログ「クリーネストライン」に興味深い記事が掲載されてた。環境を語る上で非常にバランスのとれた内容だったので、ぜひともAkimamaでも紹介したいと思ったんだよね。

 ブログは「パタゴニアのプラスチック梱包:衣類配送の課題に関する調査報告書」っていうタイトル。

 

<引用はじまり>
 パタゴニアでは工場の最終段階で個々の製品をプラスチック袋で梱包します。そしてカタログやウェブサイトから直接購入されるお客様から、プラスチック袋によるごみの量に失望しているとの声が寄せられました。
<引用ここまで>

 

 この声に対して、まずプラスチック袋(いわゆるビニール袋)を使うことが妥当なのか、妥当だとしたらその使用量を減らせないか、って調査をした結果なんだけどね。

 製品を取り出したあとのプラスチック袋を見てげんなりしてしまう。この気持ちはよく分かる。僕らも何かの包装を見て「もっと簡単でいいのに」って感じることはあるよね。うん、プラスチック袋よりも紙袋ならもっといいかも、もしかしたら袋なしでもいいって思うこと、あるでしょ。で、ホントにそうなのか、っていうのをこの報告書では検討してる。

 詳しくは実際に読んでみてほしいけど、実施したテストの内容を簡単にまとめておくと


・プラスチック袋を使わない⇨30%が売り物にならないほど汚れる⇨製品がダメになることより、プラスチック袋を使った方がいいよ
・プラスチック袋ではなく、紙の封筒に切り替える⇨封筒が破れた例あり⇨製品を無傷で届けることができないかも
・発送前にプラスチック袋から取り出して段ボールに詰め替えよう⇨めっちゃ手間がかかってムリ

 

 ってことがわかった。つまり、トータルで判断した場合(ここ、とても大事だね)、現状ではプラスチック袋がいちばんバランスのとれた梱包方法だって確認されたわけ。

<引用はじまり>
 プラスチック袋は製品が工場内やサービスセンターへの経路、そしてサービスセンターでの保管中や作業中、包装中に汚れたり損傷したりするのを防ぐ。さらに、プラスチック袋があれば卸売店や小売店での保管中も製品が清潔に保たれる。
<引用ここまで>

 

 こういったことを理解した上でプラスチック袋を使うことは、今までとは違って一歩深いところでものを考えることに繋がると思う。全体としていい結果に結びつくことを見据えて、小さな手段を決めていくっていう視点を得ることができるからね。さらに調査報告書では、プラスチック袋を使うなら、として。


・衣類をもっと小さくたたむ⇨プラスチック袋を小さくできる⇨プラスチック袋の消費量を削減できる
・プラスチック袋のリサイクルをすすめる
・再生プラスチック袋の使用について検討するため、調査する

 

 といった解決策を提示してる。ちゃんと現状を踏まえた上で、できることを見据えているのは素晴らしい。

 プラスチック袋がバランスのとれた解決策であることは、あくまでもpatagoniaの流通経路上でのお話し。だけどこの記事は僕らにとってたくさんのことを示唆している。つまり、引いた目線でバランスのとれた考え方をすることの大切さだ。
 環境問題では、小さな善の積み重ねが必ず大きな善に育つ、とは限らない。それくらい環境っていう大きなシステムのことを考えるならバランスのとれた広い視野が必要になるし、広い視点で得た考えを共有することはとても大事なことだと思う。
 どこまで広く見るかは議論の立脚点で違ってくるだろうけど、少なくとも目の前のプラスチック袋だけを見て環境を論じることはあまり意味のないことかもしれないね。
 考えるならトータルで。そのことを具体的な例を示して気づかせてくれる秀逸のブログだったよ。是非、ご一読を。

 

■パタゴニアのプラスチック梱包:衣類配送の課題に関する調査報告書
http://www.thecleanestline.jp/2014/08/patagonias-plastic-packaging-a-study-on-the-challenges-of-garment-delivery.html

■クリーネストラインとは - パタゴニアのブログ「クリーネストライン」http://www.thecleanestline.jp/about.html

■パタゴニア
http://www.patagonia.com/japan/

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

スノーボード、スキー、アウトドアの雑誌を中心に活動するフリーライター&フォトグラファー。滑ることが好きすぎて、2014年には北海道に移住。旭岳の麓で爽やかな夏と、深いパウダーの冬を堪能中。

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