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コロナ禍の海外フェス事情/ヨーロッパ編 2022年にフェス本格再始動へ。国や自治体主導のテストイベントも続々実施!

2021.06.24 Thu

 アメリカでは6月後半をメドに各地で限定的ながらライヴ・イベントが再開される。さらに夏から秋にかけての音楽フェスの開催がアナウンスされるなど、徐々に「音楽イベントのある日常」が戻りつつあるが、今回はヨーロッパのフェス事情について。

 昨年はイベント関係が軒並み大打撃を受けたヨーロッパでも、6月中旬から延期となっていたサッカー「UEFA EURO 2020」が開幕した。会場によっては通常の動員数の約4分の1という制限のなか有観客で大会が行われている。開催する11カ国の自治体がしっかりとしたガイドラインを示した上で、この国際的な巨大スポーツイベント開催に向け前向きに取り組んでいる。

 コロナ禍で次々とロックダウンとなったヨーロッパ圏の都市では、2020年に続き2021年も大きなフェスはこれまで中止が相次いでいる。スペイン・バルセロナの「Primavera Sound」「Sónar Barcelona」やイギリスの「Glastonbury」は早々と中止を発表、公式サイトには来年への再開の願いにも似た「2022」の文字が踊る。

Primavera Sound2022年6月2日〜4日、9日〜11日の2週にわたり開催される。Massive AttackやTame Impalaがラインナップされているのに加え、日本からもPerfumeの出演が発表されている。

 その一方で北米同様、夏から秋にかけて再開に始動したフェスも増えてきた。イタリアの「POLIFONIC」が7月、イギリスの「Houghton Festival」とオランダの「Loveland」は8月、クロアチアの「Dimensions」が9月に開催発表された。
 これらの動きについては、6月時点でイギリスが人口の59.8%、ドイツが45.6%、イタリアが45.6%、スペイン42.9%、フランス41.9%(世界各国のワクチン接種状況を示した「Our World in Data」の集計より)と、世界のなかでも突出してワクチン接種が進んでいることもあるが、国や自治体がフェス産業復興のあと押しとなる実証実験に前向きな点もあるのだろう。

POLIFONICイタリアのポリフォニックは7月22日〜25日という開催日程は公表されているものの、ラインナップは発表されていない。

Dimensionsクロアチアのリゾートで9月2日〜6日まで開催。DJを中心に、100以上のアーティストがラインナップされている。

 2021年に入りイベント再開に向けて各地で社会実験が行われているが、特に日本のニュースなどで取り上げられたのがイギリス・リバブールの取り組みだ。5月最初の週末に政府のイベントリサーチ・プログラムとして、1年ぶりにFatboy Slimらをヘッドライナーにミニフェスが行われた。

 観客がノーマスクでクラブイベントに興じる姿は、今となっては大胆すぎる光景にも見えるが、事前にLFT検査(PCR検査よりも手軽な検査方法)を受け陰性だった6000人が参加し、3週間後にコロナウイルス感染者がひとりも出なかったと発表。同様のテストイベントがオランダやスペインでも行われている。

 リバプールに関しては、その後も街ぐるみで大規模なビジネスイベントやナイトイベントなどで実証実験を続け、6月21日に予定されていたロックダウン緩和に伴うナイトクラブとイベントの再開という政府のロードマップの一端を担った。残念ながら6月に入り変異種といわれるデルタ株の拡大による新規陽性者が増加傾向にあるために緩和策は撤回され、イギリスでのロックダウンはさらに4週間延長されることになりそうだ。まだまだ予断が許せない状況であり、いばらの道が続くが、少なくとも政府が出口を明確に示している点では希望も見えつつある。

 最後にほぼ不毛に近かった上半期のヨーロッパのフェスシーンで、敢えて記憶に残るシーンを挙げるとしたら5月23日に「Glastonbury Festival」の会場で行った無観客の有料配信ライブ「Live at Worthy Farm」だろうか。

 例年どおりのフルのフォーマットでのイベントとはいかないものの、グラストン名物のピラミッドフィールドを利用しColdplay、Damon Albarn、Michael Kiwanukaなどのフェス常連アーティストが登場した。この配信ライブは5時間を超えるものとなった。映像はThe Rolling StonesやAriana Grandeなどのライヴ作品を監督したポール・ダグデイルがディレクターを務めた。Coldplayの無人の客席をライティングや花火で埋め尽くした視覚効果満点の演出などは、コロナ禍でのライヴパフォーマンスのハイライトとしても語り継がれることになるだろう。

 フェスは現地参戦がいいに決まっているが、この2年間でネットを使った音楽フェスの表現方法の進化が、私たちにさらなる新たな楽しみ方を提供してくれることに期待したい。

Glastonbury5月に行われたLive at Worthy Farm。1970年にスタートしたグラストンベリー。50周年を祝うフェスは2022年に開催。どんなラインナップになるのか、世界のフェスファンが注目している。

(文=早坂英貴)



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