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<奥山英治の野遊び暦・春分>どこにでもある春の味「土手菜」を食べよう

(2016.03.20)

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「日本でいちばん野山で遊べる男」との呼び声高い、日本野生生物研究所の奥山英治さん。海山川の動植物に通じ、生き物との遊び方を極めた「歩く野遊び図鑑」が季節の自然の楽しみ方を紹介します。

 昼と夜の長さがほぼ同じになる春分。冬至から夏至に向かって陽光は確実に力を増してきていますが、春を強く感じるのは、毎年この頃ではないでしょうか。

 少し前までは一面の茶色だった原っぱも、枯れ草の間から緑の新芽が顔を出し、テントウムシなども見かけるようになってきます。

 このタイミングで楽しみたいのが「草摘み」。芽吹いたばかりのアクの少ない食べられる草を摘む、昔ながらの野あそびです。

 山菜採りとなるとちょっと遠出をしなくてはいけませんが、草摘みなら都市近郊の里山や、住宅地を流れる川の土手でも手軽に楽しむことができます。

 草摘みの対象は身近にある食べられる野草ですが、これまではそれを指示する呼び名がありませんでした。深山の「山菜」とは違うけれど「野草」とも違う。そこで私が仲間と使い始めたのが「土手菜」(どてな)。山の食べられる草が山菜なら、土手に生える食べられる草は土手菜だろう、というネーミングです。

 この土手菜、意識して周りを見回してみるとどこにでも生えています。今の時期であれば、東京で電車に乗っていても、線路際にその姿を見つけられます。

 代表的なものでは、ヨモギ、ツクシ、ノビル、カンゾウ類など。このほかにも、図鑑を片手に近所の河原を歩けば、いくつもの食べられる草を見つけられるはずです。

 先日、私が出かけた先で採ってきたのがヤブカンゾウ。アクが少なく、どんな料理にもあう土手菜です。
ヤブカンゾウ。これくらいの小さな株が美味しい

生え方はこんな様子。葉の出方に注目

ヤブカンゾウの群落。これだけあればいっぱい採れる! と思っても、少量をいろんな場所から採るのがマナー

今回はタケノコ、玉ネギ、豚肉と合わせて、豆板醤でピリ辛の卵炒めに

できあがり。カンゾウは癖がない土手菜なのでどんな料理にも合いますよ!

 初めて土手菜を楽しむなら、どこにでも生えていて匂いでほかの植物と区別がつけやすいノビルがおすすめ。ノビルは根元に白地に薄紫の線が入り、掘り上げれば真っ白い玉からネギ類らしい香りが立ち上ります。

 食べ方はさっと湯がいて、酢味噌で食べるのが一般的。アサツキやエシャロットのような歯触りと香気が楽しめます。

まさしく、土手に生えたノビル。漢字で書けば「野蒜」。蒜とはネギ類の古称ですから野にあるネギ、という意味ですね

左の画像のひときわ大きいものを掘ると、出てきたのはこんな大玉!

さっと湯がいて酢味噌で食べれば春の味!

 土手菜を野菜のようにお腹いっぱい食べようと思うと、大変な作業が必要になりますが、夕食に一品、季節の自然を楽しむつもりで加える程度なら、散歩のついでにでも集められます。

 土手菜の本当の魅力は、食べることそのものよりも「なんか食べられるものないかな」という視点を与えてくれること。この視点をもつだけで、毎日の散歩道が全くちがって見えるようになりますよ!

※でも、毎年この時期には毒草を間違えて食べる事故が起きるので、しっかり同定できるようになってから食べてね!

 
 
ライター
奥山英治

日本野生生物研究所を主宰。動物、鳥類、昆虫、植物……と、あらゆる生き物に精通。雑誌やワークショップを通じて、四季の自然の楽しみ方を紹介する。

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