ともに遊び、ともに学ぶ──“エコアイランド”を守るためにできること

2023.12.18 Mon

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宮川 哲 編集者

 いま、宮古島人気が凄まじい。日本を代表するリゾートアイランドとして、世界からも注目される宮古島だけに、コロナ禍以降の観光客数の回復ぶりは目を見張るものがある。たしかに、魅力的な島である。幾重にも変わる海の青色、島を彩る原色の花々、美味しい食に愉快な島人、快適なホテル……。都会の人たちが想像し得る“南のラクエン”がこれだけ揃っていれば、誰もが憧れるのもうなずける。
青い海と青い空。宮古ブルーともいわれる独特の青は、ここにしか存在しない
 この魅力を後世に残すべく、宮古島の人たちが掲げているのが「エコアイランド宮古島」という考え方。地元の住民はもちろん、行政もいっしょになって「島を守る」ための取り組みをずいぶん前から行なっている。宮古島市としては2008年に「エコアイランド宮古島宣言」を、 さらに2018年には「エコアイランド宮古島宣言2.0」を掲げた。

 島に暮らす人たちと島へ訪れる人たちがともに、この島を守るために何ができるのか。そのためのビジョンとして、2023年のいま「千年先の未来へ。ECO-ISLAND MIYAKOJIMA」構想が始まっている。これはいわゆるSDGsの一環であるが、2050年に向けた具体的な5つのゴールを設けている。この活動で、宮古島に関わるすべての人に未来への意識を共有してもらいたいと考えている。
宮古島が掲げる「千年先の未来へ」をイメージした宮古島市のポスター
1.地下水を守る(窒素濃度を下げる)
2016年に、1リットルあたりの窒素5.05mgを→2050年までに、2.17mgに下げる
2.家庭系ごみ排出量を減らす
2016年に、1人1日あたり542gを→2050年までに、434gに減らす
3.エネルギー自給率を上げる
2016年に、自給率2.9%を→2050年までに、48.9%に上げる
4.サンゴを守る(サンゴ被度)
2016年に、ハマサンゴ優占群集20〜30%、ミドリイシ優占群集5〜10%を→2050年までに、それぞれ40%以上、70%以上に上げる
5.固有種の保全(外来種対策)
2030年までに、伊良部+宮古北部 クジャク固体群根絶→2050年までに、市全域クジャク個体群根絶

 宮古島では未来にこの島の自然をつないでいくために、多くの人たちがこういった活動に取り組んでいる。山もなく水資源の乏しい離島だけに、農業用水も生活用水もその多くを地下水に頼る宮古島。その水質の向上は、サトウキビなど島の産業の維持にも関わってくる。また、サンゴの白化や波浪による破壊、海洋プラスチックによる汚染もある。ここには、ゴミ問題との関わりとともに、年々悪化する地球規模の気候変動による影響など、さまざまな要素が絡んでいる。ビーチに転がっているゴミを拾う。たったそれだけではあるが、そんな積極的な保全活動をみんなで続けなければ、やはり次の世代にこの豊かな海を残すことはむずかしい。

 まずは、何が必要なのか。やはり、ひとりでも多くの人に現状を知ってもらうこと。共有の認識を持つことである。
宮古島のおもな産業のひとつにサトウキビ栽培がある。その農業用水の多くを地下水でまかなっている。きれいな水の確保はこの島の生命線でもある
「千年先の未来へ」というキャッチコピーは、もちろん、島内の市民だけに向けられたものではない。この島を訪れるすべての人への共通のメッセージである。他にはないリゾートを求めて宮古島にやって来る観光客の多くは、宮古の海、人、食のすばらしさに触れ、ひとときの愉楽を味わう。それぞれの人が持って帰るイメージはとても大事で「また来たい」と思えれば、繰り返し宮古に訪れることになる。

 ただ、知っているのは煌びやかな「リゾート」の一面だけという状況になっている可能性も否めない。これでは、未来へはつながっていかない。だからこそ、ありのままの宮古島、宮古の自然の魅力をもっともっと知ってもらいたい。

「宮古島の自然、そのものを守りたい」と思ってもらうためには、リゾート体験とはまたちがったアプローチが必要となる。おそらく“エコアイランド”という観点から宮古島を眺めてみれば、リゾートだけでは知り得なかったものが見えてくるはずだ。宮古島の自然はここにしかない。ならば、訪れる側の人たちにはより一層の意識が求められる。リゾート旅ではない、もう少し自然に寄り添ったかたちで旅をしてみるのもいいのではないだろうか。
まっしろなサンゴの浜に打ち寄せるさざ波。水のあたたかさ、潮の匂い。この水に少し触れてみるだけでも、自然への感覚はまたちがったものになる 
 いまでも多くの人たちが、宮古の自然を知ってもらうための活動を続けている。SUPやシーカヤックのガイドたちは宮古の海を、水上の目線で多くの人に見せている。シュノーケリングやダイビングのガイドたちは、水中から海を眺める。一度でもこういった体験をした人なら、純粋に「きれいだな」と思える自然が宮古にはある。「きれいだな」という気持ちはやがて、「この自然を残したい」という気持ちにもつながっていくはずだ。これもツーリズムのひとつのかたち。
佐和田の浜に沈む夕日をSUPから眺める。あとは、何もない。ただそれだけのぜいたく青い海の底には、また別の世界が広がっている。シギラにて
 さらに、「キャンプ」という旅の手段もある。離島でのキャンプは少しハードルが高いかもしれないが、キャンプほど自然に近い宿はない。たとえば、浜辺にテントを張って、自然を愛でる。太陽の動きとともに宮古の一日を過ごす醍醐味は、やはり他で味わえるものではない。波の音に包まれて眠る心地よさは格別だ。宮古の一日の時間はゆっくりと過ぎ、何をするでもなく、ただそこに居るだけでもいい。

 旅の手段を変えれば、海でも陸でも、宮古の自然をより身近に感じられるアクティビティは多い。ともに遊び、ともに学ぶ。島外からやって来る多くの人たちと島人たちが宮古の海を空を、そして島の自然を共感できるのなら、こんな旅のスタイルも悪くない。

 ただ残念なことに、いまの宮古島にはキャンプができる場所があまり多くない。宮古島でのキャンプといえば、たとえば、MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVALのキャンプサイトがある。このイベントは宮古島を代表する野外フェスであり、今年で15回目の開催となった。じつは、このイベントも環境に関しての意識はかなり高く、ボランティアを募ってのビーチクリーンの実施や会場内でのゴミの削減、参加者たちといっしょに環境対策のための寄付を行なうなど、具体的な活動が多い。
2023年10月14日。青い海と青い空のもと、第15回目のMIYAKO ISLAND ROCK FESTIVALは開催された。平良のトゥーリバーにて
 会場内にキャンプサイトをつくっている理由もここにある。宮古島の自然をいちばん近くで感じられるのはやはり「キャンプ」であり、島を訪れる人たちにその魅力を実感して欲しいと、イベントの実行委員会のメンバーたちも語っている。
イベントの期間中だけではあるが、平良のトゥーリバーには、特別なキャンプサイトが誕生する。目の前にあるのは伊良部大橋
 キャンプの目線から見えるもの。ゆったりとした時間の流れも、肌にまとわりつく南国の風も、ここでしか得られない大切なもの。テントの布越しに感じる宮古島の自然は、より身近なものになっていく。この感覚をひとりでも多くの人に、共有してもらいたい。だからこそ、宮古島でのキャンプ泊に挑戦してみて欲しい。

 では、どこにテントを張ればいいのか......せっかくなので、宮古島のキャンプ事情についての取材をもう少し進めていきたいと思う。次項の「“ありのまま”を楽しむ離島キャンプの魅力──宮古島、Y’sガーデン狩俣キャンプ場」では、数少ない宮古島のキャンプ場のひとつを紹介したい。とても魅力的なキャンプ場だから。
 






協力:沖縄県・一般社団法人宮古島観光協会、アイランドエキスパート、MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL実行委員会

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