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北国に雪の使者がやってきた。ふわりと空を舞う白い虫は……
2014.10.17 Fri
「ふっゆっが〜、来る前に〜」なんて書くと年が知れるというものですが、こいつがふわふわと舞う光景を見ると、つい口ずさみたくなってしまいます。
それが、雪虫。
北海道では「雪虫が舞うと1週間から10日で初雪が降る」といわれ、太陽の光に反射して白い雪のように漂う姿は晩秋の風物詩ともいえるもの。今年も山では2週間ほど前から、平地でも1週間ほど前から見かけるようになりました。雪と違うのは降り落ちることなく、空中を舞い続けていること。そして、よく見ると白い中にも黒くポチッと何かが見える(ま、虫ですから)。
雪虫の正式名はトドノネオオワタムシ。アブラムシの仲間で(ゴキブリじゃないほうね)、北海道だけでなく東北でも見られます。その生態はなか なか複雑で、季節によってトドマツとヤチダモの間を行き来し(飛んで)、ヤチダモの葉の裏やトドマツの根で単為生殖=メスだけで子孫を増やし ます。秋の今はトドマツからヤチダモへと移動する時期で、この後、年に一度、オスが発生して卵を生みます。ちなみに雪虫は初夏にも飛びます が、秋に比べて数が少ないために、目にすることが少ないとか。
では、雪虫はなぜ雪のように見えるのか。それは胴体からロウ物質(ワックス)を分泌し、それが白い綿のように見えるから。アップで見るとなんとも可愛らしい姿をしています。ただ、見た目はふわふわながら実は少々ベタついていて、群れで舞っているなかを自転車で突っ切ったりすると服に張り付きます。で、払おうとするとベチャッと潰れてしまう。あと、気をつけないと鼻や口にも入ってきます。
先に「雪虫が舞うと1週間から10日で雪が降る」と書きましたが、それほど正確な数字ではなく、実際にはもう少し間があることが多いようです。それでも、この時期になると朝晩の冷え込みは厳しくなり、各地から初霜や初氷の便りが聞かれるようになってきます。冬支度を急がねばという気持ちとともに、来たるスノーシーズンに向けてそわそわとしてもくるのです。さて、今シーズンの雪のコンディションはどうなりますか——。
(文・写真=長谷川哲/山登り、自転車旅などを得意とする北海道在住のフリーライター。著書に『北海道16の自転車の旅』(北海道新聞社)。また『北海道夏山ガイド』(同)の取材スタッフとして道内の山を歩いている)