• 山と雪

これがノルウェーの山の常識? 無人小屋の「鍵」を借りて山へ登る

2016.11.22 Tue

小宮華寿子 ライター、編集者

「Akimama×NORWAY」の小特集、先日の第3回「自然の王国ノルウェーを3泊5日で」に続いての最終回は、いよいよ山登りの話。ノルウェーでは「無人小屋の鍵を借りて山へ登る」のが、山の常識!? ノルウェートレッキング協会、やりますねー。
赤いTの字はノルウェートレッキング協会による道しるべ。©Anders Gjengedal
        
 ノルウェートレッキング協会。その存在は知っていましたが、なんとなく敷居が高いような気がしていました。ましてやここは、アウトドア大国ノルウェーですし。その頂点にある協会の人っていったら、ヴァイキングみたいな屈強な男の人のイメージ。

 だからまずは、外からそおっと覗いてみました。オスロにあるノルウェートレッキング協会のインフォメーション。
オスロ大聖堂近くにあるノルウェートレッキング協会のインフォメーション
 なんだかおしゃれ~。木のぬくもりあるインテリアが北欧っぽ~い。これなら中に入れそう。すると「なにか手伝う?」って、これまたお兄さんの物腰やわらか~。なんだ、ぜんぜんコワくなかった!
(左)若い人がトレッキングの相談に。トレッキングファンの裾野の広さも感じました。(右)センター内にはパンフレットが数多く並んでいて情報収集にはとっても便利。座って読んだり作戦を練ったりできるスペースもあります  
 ノルウェートレッキング協会(Den Norske Turistforening/略してDNT)はノルウェー全国の地方山岳団体を統括する組織で、その会員数は約26万人。

 協会がこれまでにマークしたトレッキングルートは20,000km、スキーコースは7,000㎞におよび、ボランティアの人たちとともに整備を続けています。
 
 それらのコースはDNTのWEBサイトからも閲覧可能。縮尺を拡大していくと毛細血管のようにさらに赤く表示されたコースが張り巡らされていて、それはもうすごい数。下のそれぞれの地図をクリックすると、詳細が確認できますよ。

 このWEB上の地図はノルウェーでの登山計画を立てるのにとても便利。たとえば前回、少しだけご紹介したヨートゥンハイメン国立公園(Jotunheimen)ベッセゲン尾根(Besseggen)のコースは、ルートや高低差がこのように表示されます。

 ハダンゲルフィヨルドエリアにある「トロルの舌(Trolltunga)」へのコースはこんな感じです。

 DNTの活動はこのほかに、夏山トレッキング、氷河トレッキング、クロスカントリー、カヤック等ガイドツアーの開催、ガイドの育成、山小屋の管理などなど。

 DNTは500以上の山小屋を管轄していますが、有人小屋のクオリティは国内外で評判。地元の食材を使った食事はおいしく、部屋は清潔・快適。ちょっとしたホテルのようだと。
有人小屋に宿泊した場合、朝食ビュッフェから昼食用のパンやハムをとってサンドウィッチをつくっていいのだそう。ノルウェー人は家から登山に行く際もたいてい手作りサンドウィッチを持参
 さらに興味深いのは無人小屋。100ノルウェークローネ(約1,260円)のデポジットを支払い、DNTキーという鍵を借りてから山に登るのです。

 無人小屋といっても、避難小屋というよりは貸し別荘。小屋によって設備はさまざまですが、布団も台所用品も揃っていて、インスタントスープなどの保存食を完備している小屋もあり、食べたものを申告して支払うのだそう。

 無人小屋の宿泊料はDNT会員で245クローネ(約3,090円)、会員以外だと355クローネ(約4,470円)。会員になるには年間640クローネ(約8,060円)の会費が必要です。

 ノルウェーは日本よりかなり物価の高い国なので、これはとても良心的な金額。鍵を借りられる場所は、ここオスロのDNTインフォメーションのほかノルウェー各地のツーリストオフィス、そしてスポーツショップなど。鍵を返すとデポジットは戻ってきます。

登山してもしなくてもDNTインフォメーションへ

 個人でノルウェーの山に登ろうと考えているならば、まずここ、オスロのDNTインフォメーションに立ち寄ることをおすすめします。

 一般の人が気軽に相談できる雰囲気で、この日も若い青年2人が相談に来ていました。スタッフの方は地図を広げてていねいにアドバイスされていましたよ。

 燃料や地図、目的地に合わせた装備もここでスタッフに相談しながら購入することができます。
登山には必携の地図。ノルウェー全土の地図がここで購入できます
 ノルウェーでの登山の計画がなかったとしても、山好きの人にはおすすめの場所。販売するアウトドア用品のセレクションが光っていて、見ているだけで幸せになれます。

 DNTのオリジナルグッズにはロゴマークの赤いTの字。このマークでさえ、めちゃくちゃかわいく感じるのは私だけでしょうか。

 3泊5日の滞在だけですっかりノルウェー中毒なのかもしれません。今回の旅では、実際に山に登る時間がとれなくて残念。

「なにか手伝う?」というスタッフの方に「次回ノルウェーに来るときにお願いします!」と言い切って帰国の途についたのでした。
(左上)アウトドアグッズの販売もしているDNTのインフォメーションセンター。日本から忘れ物をしても大丈夫。(右上)北欧先住民族サーメの伝統工芸品「ククサ」。山にも持っていけるし、使わないときには家に飾っておけるカップです。白樺のコブでつくられていて、「贈られた人が幸せになる」ともいわれています。(左中)DNTオリジナルのファーストエイドキット。(右中)フェールラーベンのジャケット。落ち着いたアースカラーで旅にも重宝しそう。(左下)飛行機に乗せられないガス缶は現地調達するしかありません。ここで買えます!! (右下)DNTオリジナルのニットキャップ。DNTの会員になると割引価格で購入できます  

■The DNT Tour Information in Oslo
[所在地] Storgata 3, Oslo
[Tel.] +47 22 82 28 22
[E-mail] turinfo@dntoslo.no
[開所時間] 月・火・水・金曜日10:00-17:00/木曜日 10:00-18:00/土曜日10:00-15:00
   

※1ノルウェークローネ≒12.6円(2016年11月現在)
※ノルウェートレッキング協会の会費や山小屋宿泊料は2016年度のものです。

            

[取材・文・写真=小宮華寿子 取材協力・写真=ノルウェー政府観光局

小宮華寿子 ライター、編集者

旅行・アウトドア関連の出版社勤務を経て、フリーランスの編集者に。育ち盛りの2男1女の肝っ玉かあさん。ひとりでも子連れでも世界を歩き、オーストラリアとブラジルを含む引っ越し歴はなんと16回。次はどこの国に暮らすか考え中。著書に『ブラジルの手しごと』(メイツ出版)がある。

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