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クライミングあの山この山。クライミングの聖地【小川山・小川山レイバック】

(2018.09.10)

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日本のヨセミテ「小川山」

 これからクライミングを始めてみたいと思っている人や、クライマーのみなさまに、オススメの岩場とルートを紹介するこの企画。第3回目となる今回は、クライミングの聖地とも言われる「小川山」を紹介する。

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クライミングあの山この山。

 クライミングをやっている人だと、一度は耳にしたことがあるであろう「小川山」。小川山という呼び方が定着しているが、山頂はクライミングエリアから遠く、正確には「廻り目平周辺の岩場」が正しいだろう。金峰山の北側に位置する廻り目平は、広大なキャンプサイトを有しており、クライマーだけではなく、キャンプを楽しむ人も数多く訪れる。

 この廻り目平は標高1,570mという高所にあるため、暑い夏場でも涼しくクライミングをすることができる。1,570mといえば、避暑地で有名な軽井沢でも940m(軽井沢駅)、百名山だと丹沢山が1,567mとほぼ同じで、いかに標高が高く涼しい場所か想像できるだろう。標高100mで気温が0.6℃下がるといわれているので、0mからだと約10℃違う計算になる。

マラ岩頂上より。右の駐車場一帯が廻り目平キャンプ場。中央に、今回紹介する小川山レイバックがある親指岩。右上には、圧倒的な存在感の屋根岩。左の沢が八幡沢だ。

 小川山にはいくつもの岩場があり、キャンプ場周辺の「廻り目平周辺」、カモシカ遊歩道周辺の「金峰渓谷」、圧倒的存在感を誇る「屋根岩」、西股沢を渡渉した先にある「西股沢対岸」、金峰山方面へ向かい右手にある「八幡沢周辺」の5つのエリアに分けられ、あとはいたるところにボルダーが点在している。

 岩質は花崗岩。大きく荒い粒子で、フリクションが良く、この岩質を好むクライマーは多い。ヨセミテも花崗岩なので、これもあって「日本のヨセミテ」と言われるようになったのだろう。

八幡沢左岸スラブの「トムといっしょ(5.10a)」。5.10台の初リードにおすすめのルート。この奥には人気ルートの「ブラック&ホワイト(5.10b)」と「ジャーマンスープレックス(5.10c)」が。どちらもスラブでグレード以上に難しく感じる。

 今回紹介するのは、廻り目平周辺にある親指岩の「小川山レイバック」。トラッドクライミングと呼ばれ、岩の隙間(クラック)を、ジャミングというクラックに手や足をねじ込み固定するムーブで登るルートだ。人工的な支点は存在しないので、カムというクラックに挟みこみ固定する道具で安全を確保する。

 グレードは5.9+で、このルートからクラックにハマるクライマーも多い超人気ルート。週末の日中はほぼ順番待ちになるため、オススメは朝一か夕方前。ここまでキレイに走るクラックはなかなかない!

■シーズン
 快適に登れるシーズンは、4月下旬〜11月上旬に金峰山荘が営業しているので、5〜10月だろう。実は営業期間外でも、入り口の車両用ゲートが解放され、自由に出入りすることができる。寒さに気をつければ廻り目平でクライミングすることが可能だ。しかし、水場やトイレなど、施設の利用ができなくなるので注意しよう。

■アプローチ
 金峰山荘からバンガローや有料サイトを抜け15〜20分ほど登ったところに親指岩がある。踏み跡はしっかりしているし、途中「親指岩下ボルダー」を通るので分かりやすい。と書きながらも、じつは親指岩に行こうとして八幡沢左岸スラブに行ってしまったことがある……。小川山のアプローチは難しいといわれるが、それも良さの一つ。何度も迷って道を覚えよう。

今回紹介する小川山レイバックは、コーナーに走るキレイなクラックだ。木陰で夏場でも涼しい。

■ルート紹介
 「日本で一番有名なクラック」ともいわれるこのルート。コーナーに走った一直線のクラックが素晴らしい。手のひらが半分ほど入るシンハンドサイズから、手が全部入るハンドサイズで(手の大小によって異なるが)、クラックは深くジャミングがバッチリきまるため、気持ちの良いクラッククライミングができる。

 出だしはシンハンドサイズで、足もきめにくい。ここはルート名どおりレイバックでハンドジャムがきまる位置まで手早く上がってしまおう。序盤から中間のレッジ(張り出した岩)までの傾斜は垂壁。ハンドジャムがきまり始めればレッジまでは難なく進めるだろう。ここでのポイントは、「手や足で使う位置」にはカムをきめないこと。きめやすいからと考えなしにカムを使うと、フットジャムをしたいのにカムがあってできない! となってしまいがち。

 レッジから抜け口まではやや被りになる。さらにクラックのサイズは徐々に広がってきて、手が小さい人は苦戦するだろう。ここまで来ればあと少しで完登だ。フットホールドも豊富になってくるので、焦らず着実に登ろう。

 最後の難関は抜け口で、立てる位置まで登るのが意外に大変。傾斜が変わる位置まで来たら、その先にもクラックは走っているので、思い切って傾斜が変わった向こうに手を伸ばしハンドジャムで這いずり上がろう。上がればそこに終了点がある。

 使用するカムは、ブラックダイヤモンドのキャメロットだと#0.75〜#2が良いだろう。数量は2セットを基準にし、不安なら増やすとよい。

 クラックの1ピッチ目しか紹介しなかったが、じつは、この小川山レイバックは2ピッチのマルチピッチルートなのである。正しい1ピッチ目の終了点は、上記のクラックを越え、スラブを進んだ先にある。2ピッチ目はそこからさらに登り、親指岩の頂上が終了点だ。頂上に支点があるので、クラックの抜け口にある支点も使用し、2回の懸垂下降でおりる。

■キャンプ
 廻り目平はキャンプ場としても人気が高い。テントは決められたスペース内ならば好きな場所に張ることができる。金峰山荘上の大駐車場付近は、車が停めやすいがやや傾斜がある。山荘からさらに金峰山方向に進んだ森の中は、車が停めにくいが平らで広く居心地が良い。

 直火での焚火が可能なので、岩場からの帰りは薪を拾うのが良いだろう。当然、立木を切るのはNG! さらにバーベキューコンロをレンタルが可能。バーベキューと焚火で楽しい夜をすごそう。

キャンプ場に車を横付けできるので、大量の食材を運び入れるのにも苦労しない。翌日のクライミングに備えてモリモリ食べよう。

焚火を囲んで山の話をする。至福の時間。

■その他のルート
 小川山には約700本ものルートがあり、初心者から上級者まで楽しめる。オススメルートも星の数ほどあるが、ここでは初心者クライマーが目指しやすいグレードのルートを紹介しよう。

クラックマルチの登竜門「セレクション(6P、5.8)」。この画像は1P目。1Pと6P目はクラック、2P目はスラブ、3P目はワイドクラック、4P目はフェイス、5P目はトラバース、とバラエティーに富み飽きない人気ルート。

・スラブなら西股沢対岸の父岩にある「小川山物語(5.9)」だ。小川山レイバックに並ぶ超人気ルート。28mものロングルート。

・フェイスなら西股沢対岸のマラ岩にある「レギュラー(5.10c)」をオススメしたい。花崗岩のフェイスといえばこれ。

・ハングなら屋根岩のソラマメスラブにある「ソラマメハング(5.10c)」。出だしにガバのハングをを越えていく。越えるところが難しい。

・クラックなら廻り目平周辺の親指岩にある「クレイジージャム(5.10d)」だろう。小川山レイバックの裏にあり、内容・スケール感共にすばらしい。

・マルチピッチなら屋根岩2峰の「セレクション(6P、5.8)」が人気。最終ピッチのY字クラックが核心で、リードで登るなら小川山レイバックが登れるようになってからが良いだろう。

 さらに20ピッチ近くもある「烏帽子岩左稜線(20P 5.8)」というルートもあります。なんと所要時間が約8時間! ハンドクラックのピッチあり、最終ピッチにはワイドクラックあり、と飽きることなく楽しめます。5.4〜5.7が続き簡単なので、支点構築やルートファインディングなどアルパインクライミングのトレーニングに最適。くれぐれも時間がかかりすぎて下山できない! なんてことにならないように。

西股沢対岸にある妹岩の大人気ルート「カサブランカ(5.10a)」。小川山レイバックの次はこれ! 妹岩は、他にも「龍の子太郎(5.9)」や「ジャックと豆の木(5.10b/c)」など人気クラックルートがある。

■注意点
 廻り目平は直火の焚火が許されている貴重なキャンプ場だ。消灯時間の21時を守り、それ以降は灯りや焚火を小さくしよう。クライマーだけではなく、キャンプや観光のお客様もいるので、迷惑をかけないようにしたい。

(画像=羽田登志男 河津慶祐)


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ライター
河津 慶祐

高山縦走からクライミング・沢登り・トレラン・バックカントリーと一年中オールラウンドに山を楽しむ。山道具好きが高じてライター・編集者に。典型的な器用貧乏で、やりたい事が多過ぎ、広く浅くになってしまっているのが悩み……。ブログは「Mountain Gear Laboratory

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