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【山ヤの子育て】親子登山8座目・「いっしょに準備」で明日がもっと楽しみに

2021.02.09 Tue

まつだ しなこ

まつだ しなこ 子連れハイカー

2歳児、 “明日” を発見する

 つい最近まで2歳8ヶ月の娘には “明日” がなかった。いま、この瞬間のみが彼女にとってすべてであり、“明日” という時間の概念が理解できていなかったのだ。

 ところが、だれに教わるでもなくいつの間にか、“明日” という言葉を使いこなすようになってきたから不思議だ。「片付けなさい!」と叱ると「明日やりまーす」と言い返され、口答えにムッとするのを通り越して感心してしまう。

 明日という日が来ることを知った娘に訪れた大きな変化は、準備が楽しくなったことだろう。それまではどこかに出かけるときには、出発の直前にバタバタと親が持ち物を準備していた。だがいまは、明日のお出かけを楽しみに、ああでもない、こうでもないといいながら、自分でせっせと準備をしている。準備する時間と、お出かけする時間。2度楽しめるようになったのだ。

 山登りにいくときも、前日に自分で準備をするようになった。お菓子のストックのなかから持っていく行動食を厳選し、手袋やマスクといっしょにバックパック(ザック)に入れる。入れては出し、また考え直して詰め直し、を繰り返し、どんどん自分のなかでモチベーションを上げていくさまが見ていてほほえましい。

 もちろん持ち物だけではなく、当日着ていくものを、前日のうちにいっしょに確認しておくことも忘れない。最近、新調したピンクのフリースベストをうっとりながめては、翌日の山行に思いを馳せる娘の姿は、すっかり山ヤの風格だ。


冬山登山ではアンダーウェア選びをしっかりと

 冬山の服装は、公園での外遊びとはちょっとちがう。いつもの公園遊びのときとはちがう服を揃えて、「明日はお山だから、特別な服を用意しておこうね」というだけで、“特別” が大好きな子どものテンションは急上昇である。

日連アルプス 金剛山 宝山 金剛山神社 藤野駅 相模原 山ヤの子育て 親子登山 インナー ベース ウェア フリーズ ベスト娘の冬山登山の服装。汚れるし、すぐサイズアウトするので、子どもの服はあまりお金をかけてこなかったが、ここはしっかり山専用のものを着用する。

 ベースに着るのはモンベル(mont-bell)の「ジオライン M.W. ラウンドネックシャツ Baby's 90」。保湿性、透湿性も当然すぐれているが、母親として感動した点はそのすばらしいストレッチ性だった。体にぴったりするのに、よく伸びるので、着せやすく、脱がせやすい。綿の長袖シャツだと、伸びがいまいちなので、大きめサイズを着せないと脇や肘部分が動かしにくい。子ども用のアンダーウェア(ベースレイヤー)にしては、なかなかのお値段ではあるが、大事なところはゆずれない。

 その上に着るのは、化繊の長袖Tシャツ。こちらはノーブランドだ。子ども服は綿素材が多いので、化繊の長袖Tシャツは登山時に重宝する。さらにフリースを着るので、このTシャツは薄手でOK。

 気温次第ではあるが、真冬はベストタイプのフリースを着用する。長袖タイプのフリースだと、腕まわりが窮屈になり本人が試着時に嫌がったので、わが家ではベストタイプを愛用している。母としても、ベストタイプのほうが着脱がスムーズなので、体温調整しやすくオススメだ。

 最後に、パタゴニアのダウンジャケット。こちらは自宅でもお手入れが簡単にできるよう、化繊インサレーションタイプを着用している。山では、抱っこしたりベビーキャリアに座らせたりすると、上着がずり上がりやすいので、着丈が長めなデザインだとお腹が丸出しにならずにすむ。


静けさを楽しむ、冬の日連アルプス

 準備万端で今回臨んだのは、神奈川県の日連(ひづれ)アルプス。

日連アルプス 金剛山 宝山 金剛山神社 藤野駅 相模原 山ヤの子育て 親子登山金剛山からはじまり、6つの山のピークをこえていく、標高400m前後の低山を中心とした縦走コース。

 眺望を目で楽しむ登山コースではなく、冬山独特の静けさを耳で体験することが目的だ。JR中央線藤野駅から徒歩で登山口にアクセスできる利便性がありつつも、比較的いつも人が少ない穴場なので、子連れでものんびり歩ける。しかも、最初と最後の急登さえ乗り越えれば、あとは気持ちがいい尾根歩きが楽しめるのだ。

 起点となるJR藤野駅には、駅構内にオムツ替えシートが備わった多目的トイレがある。改札を出たところにある観光案内所にもトイレがあるが、こちらにはオムツ替えシートがないので構内ですませよう。

日連アルプス 金剛山 宝山 金剛山神社 藤野駅 相模原 山ヤの子育て 親子登山金剛山神社のバス停脇から山に入る。うっかりすると見落としてしまいそうな登山口だ。

 20分ほど舗装路を歩くと金剛山への登山口にたどり着く。大きな広葉樹の落ち葉でふかふかになった道がめずらしいのか、娘は落ち葉に手を突っ込んだり、葉っぱでお化けのお面をつくったりと、冬の山道を満喫しながら進んでいく。木の根が落ち葉に隠れていて、少し歩きにくいのがまた楽しいようだ。

日連アルプス 金剛山 宝山 金剛山神社 藤野駅 相模原 山ヤの子育て 親子登山ピークまでの最後の5分ほどは急登になるので、ある程度ベビーキャリアの使用に慣れてからのチャレンジをオススメする。

 最初のピークである金剛山までの登り坂は約30分のコースタイム。山頂に祀られている金剛山神社は見晴らしいのいい場所にあり、藤野の街を望むことができる。神社の後ろには、キレイなベンチとテーブルがあるので、ここで最初のおやつタイムにする。「お外でパーピー(パーティー)すると楽しいね!」と、前日から楽しみにしていたおやつを広げて、寒さも忘れて大満足。

日連アルプス 金剛山 宝山 金剛山神社 藤野駅 相模原 山ヤの子育て 親子登山要所に見晴らしのいい場所があり、キレイなベンチが設置されている。「次のベンチまで行ったらおやつにしよう!」と子どもに目標をもたせやすく、助かった。

 そこからは、アップダウンの少ない尾根歩きが楽しめる。ところどころ、歩きにくい下り坂や、狭くなっている箇所があるので、そこは娘をしっかり抱っこして通過する。

 最後のピークの宝山をすぎると、ロープが張られている急登を通る。大人の足で10分もかからない距離だが、子どもが自力で下りるのは不可能である。ここは、ベビーキャリアに乗っていた息子をおんぶ紐に、娘はベビーキャリーに乗せて、慎重に進む。

日連アルプス 金剛山 宝山 金剛山神社 藤野駅 相模原 山ヤの子育て 親子登山足場が悪いわけではなく、ロープもしっかりしているので、子どもを確実に背負えればむずかしくはない。ただし、足元が見えるように、抱っこなどで下りることは絶対に避ける。

 最後の急登を無事突破すれば、ほどなく舗装道路に出る。30分ほど歩いて、駅に帰り着くころには、子どもたちはすっかり熟睡していた。藤野駅をスタートしたのが10時50分で、駅に戻ってきたのが15時だったので、2時間のコースタイムを倍の時間で歩いたことになる。娘は持ち前のポジティブさで「寒いの、だーいすき!」と元気いっぱいだった。アンダーウェアをしっかり揃えたおかげで、心配していた休憩中の体の冷えも、帰りの電車であつがることもなく、快適な冬山登山を楽しめたようだ。

日連アルプス 金剛山 宝山 金剛山神社 藤野駅 相模原 山ヤの子育て 親子登山今回は、だれにも会わず、晴天の日連アルプスを家族で独占できた。かさかさと落ち葉をふむ音、遠くで聞こえる鳥の声、そして静寂。人が少ない山だからこそ、耳で自然を楽しむことができる、いいコースだった。

 日連アルプスに登る際には、金剛山(金剛山神社)から登るコースと、宝山から登るコースがあるが、子連れの場合は金剛山から登るのがオススメ。金剛山側の急登にはロープがないので、下りだとバランスが取りにくく危険だ。登山口近くにコンビニがあるので、登りはじめる前に立ち寄ることもできる。


明日、いい日になぁれ!

 私は、娘が口にする “明日” という言葉が大好きだ。明日は必ず来るもので、楽しいことに満ちた日であることを信じて疑わない子どもの姿に、いいようもない幸せを感じる。「明日は晴れかな、なにをしようかな、どんなご飯かな」と、毎日ワクワクが止まらない。

 そんな娘と、翌日の登山に思いを馳せながら、いっしょに準備をする時間の、なんと贅沢なこと。大人になってから、朝食の献立や仕事の段取りを考えて、朝が来るのが憂鬱になったりする日も増えてきたけれど、娘といると、明日が来ることが楽しみで仕方がなくなる。

 明日もいい日になりますように、ステキな親子登山の思い出ができますように。


 

しなこさんの、パパママへのアドバイス
登山用品を購入するときは、ぜひ子どもといっしょに選びに行きましょう。中古でいただいたバックパックには、いっしょに選んだキーホルダーをつけてあげるなどひと工夫すると、「自分だけの道具」として愛着が生まれますよ。


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