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青春18きっぷをポケットに、さぁ出発。 激しく旅情をかき立てられる北海道の「寂駅」

2014.08.07 Thu

宮川 哲

宮川 哲 アウトドアライター、編集者

 今から6、7年前。北海道、旭川駅から三浦綾子の小説の舞台・塩狩峠に自転車で向かっていたときのこと。

 碁盤目に区画整理された広大な田園地帯を斜めに突っ切るように宗谷本線が伸び、そのすぐ脇を畦道のような、しかし自転車道と標識のある細い道が併走しています。

 向かい風に身をかがめながらのろのろと走っていると、夏草に覆われた土手の向こうにホームのようなものがチラリ。

 北海道ではホームしかない無人駅は珍しくありませんが、このときは何か気になってつい振り返ったのです。

 すると——え、ナニ? これが駅? 

 てっきり、農機具置き場か出小屋だと思った粗末な小屋に、駅名看板が掛っているではありませんか。ところどころひびの入ったブロック積みに錆びた波トタンの扉。

 中に入ると床は土のタタキで、隅には雪かきやスコップ、ストーブ代わりの焦げた一斗缶。

 そして通学用と思しき自転車が一台ぽつり……。つげ義春の『貧困旅行記』に出てくる「ボロ宿考」を彷彿とさせる「寂」な味わいに、ふとここで一夜を明かしてみたいと思ったほどです。

 ちなみにこの駅の名は「北比布」。宗谷本線は過去に何度か乗っているのに気づかなかったのは、普通列車すら通過するものが多いからでしょう。

 たぶん、この自転車の持ち主くらいしか乗り降りする人いないんだろうなぁ。

 道内を旅していると、時折、こんなインパクトある駅に出合います。昔懐かしいとか素朴とかいう感じではなく、いわゆる秘境駅というのともちょっと違う。あえて呼ぶとすれば「寂駅(じゃくえき)」。

 旅する者の心にえもいわれぬ旅情と好奇心を芽生えさせてくれるこんな駅をふらりと降りて、見知らぬ土地を彷徨ってみるのも一興かも。

(文・写真=長谷川哲)

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