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アルプスの林道をつないでマウンテンバイクで1週間の縦走をしたら、どれくらいの荷物が必要になる? 

2015.04.11 Sat

宮川 哲

宮川 哲 アウトドアライター、編集者

 タイトルの「アルプス」とは、本場ヨーロッパアルプスのこと。自転車人口の多いヨーロッパらしい設問であるが、この問いに対してドイツのバックパックメーカー・ドイターが、かつて「アルプス縦走のパッキングリスト」を紹介したことがあった。

 もちろん一例であるが、曰く、以下のようなリストが並ぶ。
    

■マウンテンバイクによるアルプス縦走1週間
ヘルメット 半袖ジャージ2枚 長袖ジャージ(またはアームウォーマー)1枚 バイク用パンツ1本(またはレッグウォーマー) バイクシューズまたはしっかりした底のスポーツシューズ 軽量ウィンドブレーカージャケット ウィンドストッパー素材またはゴアテックスのソックス レインジャケット サングラス エネルギーバー/マグネシウム粉末 「バイクバッグ救急セット」と個人用薬(アレルギー薬など) 予備チューブ2本 予備ブレーキパッド ミニポンプ チューブ修理キット タイヤレバー3個 使い捨て手袋2個 ショックポンプ 分解性洗剤 携帯電話 GPS パスポート 地図 財布……and more.
     

 必要な用具を並べただけであるが、これまたズラリと自転車旅のギアが出てくる出てくる。

 でも、リストを詳しくチェックしていくと、「食」と「住」に関する用具が見当たらない。これは、マウンテンバイクによって小屋と小屋をつなぐ、“Hut to Hut”の旅の形態によるものと思う。なるほど、マウンテンバイクの機動力を活かせば、そんなスタイルでの旅もできるのだろう。または、ハードなアルプス越えのルートだけに、マウンテンバイクとはいえ、パニアバッグなどを積んで大量の荷物を運ぶことには向かない故なのかもしれない。

 この荷物の総重量は、さて? 

 答えは約6kg。この6kgに意味があるようで、ドイターによれば「マウンテンバイクによる山岳地帯の縦走は、バックの重さが7kgを超えないようにするべき」とある。それは、難易度の高い道や険しい傾斜を思う存分楽しむための必要条件のようだ。

 つまり、この荷物を入れるバックの重さは1kg以内に収めるべし、というわけ。そこで登場するのが、ドイターのバイクコレクションである。これは、バイクツーリング専用のバックパックのシリーズで、登山用のバックパックとはちがった工夫が随所になされている特別なギアだ。

 このギア自体の細かな話はまた別の機会にするとして、今回はちょこっとこのバイク用バックパックの背景について触れておきたい。じつはこのバイク用バックパックというジャンルを生み出したのは、なにを隠そうドイター社なのである。

 アンデール・ヘックマイヤーといえば、アイガー北壁の初登頂を果たした登山家で、登山界では知る人ぞ知る著名な人物。その息子にあたるアンディ・ヘックマイヤーは、父の血を受け継いで山岳ガイドとなり、かつ、バイク愛好家となる。

 このアンディは、1989年にヨーロッパでの伝説的なツーリングをしている。

 ドイツのオーバーストドルフからイタリアのガルーダ湖までの450kmの初縦走に成功したのだ。これは、いわゆるアルプス越えのルートで、あの峻烈な山脈を北から南につなぐものだった。累積標高差はなんと14,000mにもわたっている。このルートは、その後、「ヘックマイヤー・ルート」として世界的にも知られるようになった。

 このときの経験を活かして、アンディは旅の翌年の90年に、ドイター社のベルント・クルマンとともに世界初のバイク専用のバックパックを生み出している。それが「ドイター・バイクワン」というモデルだ。これ以降に生まれるバイク用バックパックの草分け的な存在となる。

 バイクライドに適したコンパクトな形状で、高い通気性とフィット感を両立させたエアストライプ背面システムにヘルメットホルダー、リフレクターにツーツポケットなどを装備したものだった。

 写真にある薄紫色のバックパックが、アンディが生み出したモデルである。現在発表されているバイク用のモデルに比べれば、幾分、無骨なところもあるものの、正真正銘、これがバイク専用とうたわれる元祖モデルとなっている。

 ドイター・バイクワン以降、同社はバイク用バックパックのパイオニアとして、自転車業界に新たな旋風を吹き込んでいくことになる。

 ちなみに、冒頭のアルプス一週間の装備リストであるが、これらの荷物が丸っと収まるのがドイターのトランスアルパイン30というモデル。こちらは、モデルチェンジを重ね、現役モデルとして、いまも販売される人気のバックパックとなっている。

                     

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