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<春休み大作戦>材料費0円。燃料代0円。小枝を燃料にするウッドガスストーブをゴミから作ろうぜ

2020.03.03 Tue

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者


「極限状態でのサバイバル」は、今も昔もアウトドア界の重要なテーマのひとつである。外遊びを楽しむ人なら、無人島や天変地異そのほか、不利な状況で生き抜く自分を夢想したことがあるだろう。

 そして今、サバイバルは向こうからやってきた。悪疫と悪政が、先進国だったはずの日本がぶっ壊れていることを暴き、他者との接触を断たせ、さらには家庭へと新たな暴威を引き込んだ。力と暇をありあまらせた子供たちである。

 もう、こうなりゃこの状況を楽しもう。自宅と屋外にいるぶんには、病気も感染らない。仕事がコロナでぶっとんだお父さんと学校を追い出された子供たちよ、特別に長い春休みを、ひと気のない場所でサバイブしようじゃないか。

 さて、せっかく悪疫とアベちゃんが気分を高めてくれているのだ。今回のサバイバルごっこは、お金を使わず人力でやり抜こう。お金は、社会が機能しているときにしか使えない。

 世界が滅亡しても腹は減る。都市ガスが絶えたときにも料理ができるストーブがほしい。そうだ、家にある廃物からストーブを作ろう。そうしよう。……というわけで、やや強引な展開でウッドガスストーブの作り方を紹介します!

ウッドガスストーブってなんだ?


ウッドガスストーブとは、薪からガスを取り出して燃焼させるストーブの総称。薪からガス、と聞くと「???」な人もいるだろうが、焚き火をしたことがあれば、薪から出たガスを見たことがあるはずだ。焚き火のゆらめく炎こそ、ガスの正体である(正体であるって言った途端に訂正するけど、炎はガスが燃えたときの熱で煤が赤熱して発光したものなので厳密にはちょっと違う)。私たちがイメージする焚き火の炎こそ、燃えているガスの姿だ。

 一般の薪を燃料にするストーブと比べて、ウッドガスストーブはガスを効率よく燃やす機構をもっている。その多くは炉内で薪を高温に保ち、薪から出たガスと余熱した空気を混合することでガスを燃やしきる。薪から効率よく熱を取り出せるので薪の量を減らすことができる、燃焼が安定すれば煙もほとんど出ない。

 構造自体はいたってシンプル。2つの金属の筒を重ねて空気の層を作り、この層で外の冷気を遮りつつ吸入した空気を余熱する。穴をあけた大小の缶を重ねるだけで製作でき、特別な技術も道具も必要ない。その辺に落ちている小枝が燃料となるので、木があれば山でも海辺でも公園でも燃料の調達ができる。

用意する材料
 まずはモモ缶かトマトソースの缶を2つ、不燃ゴミからサルベージしよう。そして、それらの缶よりふたまわり大きい缶をひとつ家のなかから探し出す。

 あなたの意志が薄弱なら、家にはついぞいっぱいにできなかった「500円玉で30万円貯めれる貯金箱」があるはずだ。世界は滅亡した。もうお金は必要ない。いまこそ貯金箱を切り開く時だ(ちなみに、この缶は世界が滅亡する前なら全国のダイソーで入手可能。ほかにはホームセンター売られるペンキの収納缶や大容量のデミグラスソースの缶も使える)。

用意する道具

 製作に必要な道具は、ドライバドリル、金切りばさみ、金槌、5寸釘。「世界が滅亡したのに電動かよ」って声が聞こえてきたけど大丈夫。滅亡間もないので、ドリルの充電池にはまだ電気が残っていることにしよう。

1大きい缶を加工
 まずはきれいに缶を加工するための魔法陣を描く。小さい缶よりひとまわり大き円と、大きい缶よりひとまわり大きい円を描き、その円を8等分と16等分する線を引く。8等分の線は大きい円より外にはみだしていこう。

 続けて、魔法陣の中心に大きい缶を置き、8等分する線にあわせて点をうっていく。点は後で開ける穴(直径20mm)の中心になる。底面から25mmの高さにうっていこう。

 8等分する点をうったら、小さい缶を大きい缶の上面に載せる。小さい缶を大きい缶の中心にすえ、その外周を油性ペンで上面に写し取る。これで大きい缶の下準備は完了だ。

 続けて、8等分する点に5寸釘を当て、金槌で叩いて直径5mm程度の穴を開けていく。

 5寸釘で穴を開けたら、「ステップドリル」を装着したドライバドリルで5寸釘の穴を直径20mmまで広げていく。ステップドリルとは、金属の薄板に任意の大きさの穴を開けられるドリルビット。ホームセンター等で入手できる。

 大きい缶の上面に移り、小さい缶を写し取った円より5mm〜10mm程度内側を丸く切り取る。

 続けて、油性ペンの円まで細かい切り込みを入れて、花弁状の小片を内側へと折り込んでいく。

 でき上がった大きい缶。下方に8穴、上面に小さい缶の直径と同じ大きさの穴が開いた。

小さい缶その1を加工
 小さい缶では、切り口の縁から15mm入った場所に16個の点をうち、この点を5寸釘でうち抜いて16個の穴を開ける。穴の直径は5mmほどあればOK。

 穴を開ける時に缶が潰れないよう、こんなスペーサーを作っておくと便利。

 続けて缶をひっくり返し、小さい缶の底に5寸釘でたくさんの穴を開ける。

 加工がすんだ小さい缶。底面の穴が少ないと空気が通らないので、穴が繋がらない程度にたくさん開ける。

小さい缶その2を加工
 小さい缶その2はゴトクに使う。周囲に排気口がいくつかあり、鍋を載せた状態でも燃料を入れられる開口部があればOK。今回は缶を8等分する点をうち、そのうちの6穴を直径15mmに拡張。残る2穴の間を切り開き開口部にした。切り開いた辺は鋭いので、ここも花弁状に切れ目を入れて折り返しておく。

 写真のゴトクは高さ30mm程度だが、理想的なゴトクの高さは、缶の内容積で変わってくる。何度か燃焼させるうちに、自分が作ったストーブに理想的な高さがイメージできるだろう。


缶を合体

 大きい缶に小さい缶を挿入。このとき、大きい缶の上面の穴が大きすぎると、小さい缶が大きい缶の内側に落ちてしまう。

 小さい缶が落ちる場合は、缶の縁に数カ所切れ目を入れ、爪を折り返して落ちないようにする。

完成!
 ゴトクを載せてみて、だいたいこんな形になっていればOK! よい燃焼を得るには、通気が重要だ。(1)外缶と内缶の間に適度な空隙があり、(2)内缶の底面は外缶の通気口よりちょっと上に位置しており、(3)内缶の16個の穴は外缶の折り返した爪で塞がれていないことを確認しよう。

火入れ
 燃料となるのは直径5mm、長さ40mm程度の小枝。最初に紙などを燃やして炉内を温め、爪楊枝ほどの太さの小枝から徐々に炎を育てていく。炎が安定すると、内缶と外缶の間で温められた空気が内缶の上部の穴から勢いよく噴出。炉内で熱せられた小枝から出た木質ガスと混合して完全燃焼する。少ない薪でも効率よく熱を取り出すことができ、煙も少ない。

まとめ
 今回はドリルを使う方法を紹介したが、手間を厭わなければ金槌と釘、金切りばさみだけでも作ることができる。ドリルありなら作業時間は30分。ドリルなしでも1時間程度で作れる。木質燃料を使うウッドガスストーブは、世界が滅亡しちゃったときはもちろん、被災時にも、週末の野遊びにも活躍するぞ。

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