line_box_head

好きなように歩き、行きたいところへ行ける。そんな自由がある国は、どこに?

(2019.09.09)

アウトドアのTOP

icon


 バックパッキングには「自由へ脱出」という一面があります。でも、日本ではどれだけ自由なのか? 「登山道を歩け」「指定地以外キャンプ禁止」など、ルールに縛られることが普通であります。

 もっと自由を求めるならカナダとかの原生自然に行くしかない、ヒグマやオオカミが怖いけど——と思いきや、ヨーロッパの島国の一地域に「自由」がありました。
スコットランドの首都エディンバラ。

 歴史的、文化的に日本人に馴染み深いスコットランド(英国北部)。人口は約500万人ですが、日本と同じく工業化と近代化が進み、面積は本州の約3分の1しかないうえにその70%が農地です。「大自然でのバックパッキングで自由を」は不可能な感じですが、ここには驚くべきルールがあります。

スコットランドの大地の多くは草原やヒースの原野だ。

 それが「スコットランド・アウトドア・アクセス・コード(Scottish Outdoor Access Code/以下 SOAC) 」。内容を要約すると、「大自然はみんなのものであり、そこへのアクセスの自由は保障される」というもの。つまり、トレッキングや自転車、カヌーなどのアウトドアレジャーを楽しむとき、常識とマナーを守る限り「私有地」でも通行や利用が自由なのであります。(※SOACに関連した動画がパタゴニアのユーチューブチャンネル(英語)https://www.youtube.com/watch?v=ilmhR_EgK8Yにアップされています)。

シェトランド諸島のメインランド島にある首都ラーウィック。

 そんなスコットランドでも人気の高い地域がシェトランド諸島。バイキングの伝統が残る英国最北の群島で、伝統の手工芸品・フェアアイルセーター発祥の地としても知られています。野鳥の楽園でもあり、欧米のバードウォッチャーが「いつかはシェトランドへ」と夢見る島々。海外旅行ガイド本で有名な「ロンリープラネット社」の『ヨーロッパの最高の旅行先2019』では6位に選ばれています。

北緯60度(アラスカ州アンカレッジと同じ)に位置するシェトランド諸島は約100ある群島(そのうち有人島は15)で、総面積は1.466㎢(ちなみに東京都は2,188㎢)、人口約23,000人。上画像はその島々のひとつ、「英国一の孤島」と呼ばれるフェア島。ここは羊の放牧地。私有地でも、私有の猟場(ゲストにお金を払わせて、銃でシカ猟などをさせる)でも、スコットランドでは万民にアクセス権(通行、利用)が保障されている。もちろんキャンプも可。

 シェトランド諸島の大地はほとんどが草原で、どこをどう歩くのも自由。私有の酪農地が多いので石垣や柵に行きあたりますが、乗り越える階段や鉄扉が設置されています。シェトランド地方議会ではおすすめのコースを設定、ネットで公開しています(英語/https://www.shetland.gov.uk/developmentplans/corepathplan.asp)。

石垣を越えて私有地へ。シェトランド諸島では、おすすめのトレッキングルートの入り口にこんな案内板がある。夏のシェトランド諸島は海鳥の大営巣地。パフィン(ニシツノメドリ/上)やシロカツオドリなどが繁殖のためコロニーをつくる。アザラシだけでなく、イルカやシャチ、カワウソなど海洋哺乳類の生息地でもある。国立自然保護区になっている島(Noss)も自由にトレッキングできる。岸辺で待っていると自然保護区の管理人がゴムボートで迎えに来てくれる。

「1日のうちに四季がある」といわれるシェトランド諸島でのバックパッキングは、気候がやや安定する5月中旬から8月上旬がおすすめ。それでも「晴れのち嵐と雹」みたいなこともありますが……。

シェトランドの天気は変わりやすい。5月中旬~8月上旬の平均最低気温は5~10℃、平均最高気温は10~15℃。

 自然が厳しいと、人はそれだけ温かい。しかも、シェトランド諸島は海洋交易の歴史が長いためか、旅人を偏見なく受け入れられる風土です。私は、初対面の人の家に招待されたり、小学校の先生に請われて日本について授業をしたことがあります。外人だからといって不愉快な目にあうことはほぼないでしょう。

シェトランド諸島のフェア島の小学校で折り紙などを教えた。

 治安もかなり良いようです。私がシェトランド諸島で滞在するときは「セルフケータリング」という貸別荘みたいなものを借りるのですが、家主から「家の鍵なんてかけなくてもいいけどね」と言われたことがあります。また、家賃についても、「チェックアウトするときにキッチンテーブルの上に置いといて」ということも。

剥きだしの大自然を楽しめるシェトランド諸島。路線バスや定期連絡船など公共交通機関は整っている。レンタカーやレンタサイクルもおすすめ。市街地を外れると、一般道での自動車の最高速度が約90㎞なので、ヒッチハイクは難しいかもしれない。

 気軽に、そして自由にうろうろできるシェトランド諸島。海外バックパッキングの入門編としても最適でしょう。日本から飛行機で30時間近くかかりますが、フレンドリーな島民と自由がそこで待っています。

 シェトランド諸島については旅の情報サイト「SHETLAND」(英語)へ。

 
(文・写真=大村嘉正)

 
 
ライター
大村嘉正

四国の瀬戸内海暮らし。仕事は自然・旅系ライター&フォトグラファーで、生きかたはバックパッカーでリバーランナー。著書はラフティングガイドたちの1年を追った『彼らの激流』(築地書館)。

line_box_foot