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“NEW GENERATION CLIMBER” 楢崎明智の憧れる世界最強のクライマー

2017.03.01 Wed

森山憲一

森山憲一 登山ライター

 昨年、ワールドカップと世界選手権をダブルで制し、東京オリンピックの金メダル候補として注目を集めるクライマー、楢崎智亜。快進撃を続ける彼に追いつき、追い越そうとクライミングに没頭している弟がいる。その名は明智。次世代のクライマーとして注目される宇都宮の楢崎兄弟とは……過去の記事を再編してお伝えしたい(出典は好日山荘『GUDDÉI research』2016年秋号より。※記事は2016年9月現在のもの)。

世界最強といわれるクライマーになりたい

 昨年8月13日、ドイツ・ミュンヘンで、2016年のボルダリング・ワールドカップ最終戦が行なわれた。勝ったのは20歳の楢崎智亜。楢崎は同時に、年間優勝も決めた。日本人男子がボルダリング・ワールドカップの年間チャンピオンを獲得したのは史上初の快挙であった。

 しかしその5ヶ月前、国内のボルダリングコンペで楢崎に勝った男がいる。しかもそのとき弱冠16歳。その男の名は楢崎明智。

 ――ん !? 一瞬、何を言っているのかわからなくて混乱した読者もいるかもしれない。よく見てほしい。ワールドカップ・チャンピオンになったのは 楢崎「智亜」。国内コンペでそれに 勝ったのは楢崎「明智」。名前は似ているが別人である。

 ご想像のとおり、ふたりは兄弟。「宇都宮に楢崎兄弟あり」とクライミング界でその名を知られた強力兄弟なのである。兄の智亜さんは昨年大ブレイクを果たして世界チャンピオンまで一気に駆け上がっていってしまい、今は水を開けられた格好だが、3歳年下の明智さんも、その智亜さんに勝ったことが示すとおり実力的には兄に勝るとも劣らないものをもっていると見られている。
クライマーにしては華奢な手。まだ17歳。発展途上の手だ
 目の前に立っているその明智さんは、見上げるように大きい。聞けば、身長「185cm 以上」だという。しかし体重は60kg。手足は蜘蛛のように細く、日本人離れした体格である。身長170cmほどで筋肉質の兄とは対照的だ。明智さんがクライミングを始めたのは8歳のとき。

「トモくんにくっついてクライミングジムに行っていたのがきっかけです」

 「トモくん」というのは兄の智亜さん。ふたりは仲がよく、明智さんはいつも智亜さんのあとをついていき、兄のやることを真似していたのだという。

 体操をやっていて運動神経のよかった智亜さんにくらべて、とくに運動が得意というわけではなかったという明智さんだが、小学校4年のときには ジュニアの強化選手に選ばれる。兄の影響だけでなく、クライミングの素質もあったのだろう。

「そのころ初めて大会に出たんですが、女の子に負けちゃって。悔しかったなあ~」
 
 とはいえその大会は4位。その後も、国内のジュニアやユースの大会で上位入賞を続ける。14歳のときには、初めての海外コンペも経験。そこで2位に入り、翌年の世界ユース選手権でも4位に入る。
週に4日はジムで登り込む毎日。自宅から徒歩20分のジムができたのも実力アッ プの一因
 ジュニアクラスでその名を轟かせたあと、14歳で早くもシニアクラスのコンペにも出場。そして昨年、冒頭に書いたように、国内最大規模のジムコンペ「ザ・ノース・フェイス・カップ」で、兄を抑えてついに優勝。7月にはヨーロッパでワールドカップにも参戦した。

「日本の大会だとホールドが近すぎて苦労することもあるんですが、ワールドカップの課題は自分に合っているようで、気持ちよく登れました」

  日本人離れした体格は、むしろ海外の舞台にこそ合っているのかもしれない。 すると、夢はワールドカップで勝つことですか? と聞くと、少し意外な答えが返ってきた。

「だれもが『こいつは強い』と認めるクライマーっていますよね。(ドイツの)アレックス・メゴスとか(アメリカの)ダニエル・ウッズとか。彼らは コンペに出てくるわけではないけど、その強さはクライマーならだれでも知っている。そんなクライマーになりたいんです」
身長185cm以上。手足が非常に長く、明智さんが登っていると、クライミングウォールが狭く感じてしまう。トレーニングは基本ひとりで。兄の智亜さんが引っ越してしまい、練習相手がいなくなってしまったのが目下の悩み
  現在のクライミングは、スポーツとしての競技クライミングと、自然の岩場で高難度のルートを追求するクライミング、大きくそのふたつに分化し始めている。明智さんは後者により魅力を感じているというのだ。

 おりしも、スポーツクライミングが東京オリンピックの競技に正式決定したばかり。その東京オリンピックが開催される2020年にクライマーとして絶頂の年代を迎える明智さんだが、描いている夢は、競技で表彰台に立つ自分ではなく、世界中の岩場で高難度課題に挑んでいる自分の姿であるらしい。しかしもちろん、競技に関心がないわけではない。いちばん身近なライバルだった兄が世界のヒーローになった今、そこには強い対抗心を燃やしている。

「トモくんがこうやって大活躍していることは、僕にとっても嬉しい」と言いつつ、こう語る。

「トモくんに追いつきたい。いや、すぐに抜かしますよ」

 

PERSONAL DATA
出身地 栃木県宇都宮市
生年月日 1999年5月13日
クライミング歴 8年
主な戦績
2017年ボルダリングジャパンカップ5位
2016年 ワールドカップブリアンソン大会10位
2016年 ザ・ノース・フェイス・カップ優勝
2015年 日本ユース選手権2位(ユースA)
最高グレード
ボルダリング三段、リード5.13c
ホームジム
クライミングジムFLASH
 
 

(文・写真=森山憲一)
〔出典/好日山荘『GUDDÉI research』2016年秋号〕

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