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ウナギは「食材」か「野生生物」か?いよいよ日本の川からウナギが消えた。どうする、日本人!?

(2015.08.05)

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日本人と関係の深い魚、ウナギ。その美味しさ、生き物としての魅力を知っているのなら「規制前の食い尽くし合戦」はそろそろやめにしたい

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夕暮れ時、鈴をつけた竿を振り込んでウナギのアタリを待つのは、とても豊かな時間。その豊かさを永遠に失うかどうかは、この数年の保護にかかっている

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野遊びマスター・奥山英治さん。北海道から沖縄まで、各地の野生動物事情とその生き物と遊び方に精通。「ウナギ、獲るのも飼うのも食べるのも大好きだけど、最近は見かけてもそっとしている。こんなにいい魚、絶滅させちゃったらもったいないよ!」

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脇谷量子郎さん。「川の生態系の上位に位置するウナギは、サバンナの生態系のコントロールを担うライオンのようなもの。日本の川からウナギが消えるということは、ウナギが消えることにとどまらない可能性もあります」

 日本の川で遊ぶ遊漁者の間で、近頃話題になっているのが「ウナギの姿を見かけない」こと。

「4、5年前までは夏に夜の川を歩くと、何匹ものウナギを見かけたけど、ここ2、3年はチラホラしか見かけない。川にいるウナギは確実に減っている」

「茨城県を流れる那珂川の川漁師は『減ったとか獲れない、といったレベルではなく、いない』と言っていた」

 とは、海、山、川遊びに通じる、日本を代表するナチュラリストの奥山英治さん。

 ウナギの減少は10年以上前から警鐘が鳴らされていたが、実際に川で遊んでいる人にとっては、「ウナギはまだまだいる」というのが少し前までの感想だった。

 夏の夕暮れどき、ミミズをつけた針を川に投げ込めば2、3匹は簡単に釣ることができたし、ライトで護岸を照らしてみれば、石の隙間を出入りするウナギをよく見かけたものだった。

 ところが、3年ほど前から日本中の川でウナギの気配がぐっと薄くなっている。

「ウナギの資源に関して、研究者の感覚と遊漁者の感覚にズレがあったのは、ウナギのライフサイクルが大きく関係しています」

 と教えてくれたのは、中央大学でウナギを専門に研究する脇谷量子郎さん。

「ウナギはマリアナ諸島の西方海域で産卵し、その卵と仔魚は海流に流されながら成長します。その後、仔魚は黒潮に乗り、黒潮が東アジア一帯に接岸するころ、シラスウナギとなり川を遡上します。川や汽水域で10年程度過ごしたあと、ウナギは再びマリアナ諸島西方海域へと向かって旅立ちます」

「研究者は、シラスウナギの漁獲量も参考にしてウナギの資源量を推定していました。1960年代以降、この漁獲量は坂道を転げ落ちるように減っています。ところが、ウナギは川で過ごす期間が長いため、シラスウナギが減少してもウナギの資源量が減っていることを遊漁者は感じづらかった。シラスウナギが減少していても、目の前の川には数年から10年前にやって来たウナギがいたからです。しかし、この数年はシラスウナギの接岸量が壊滅的。いよいよその影響を遊漁者が感じるレベルまで資源量が減ったのでしょう」

 今年はシラスウナギの漁獲量が多かったため、若干安値で流通している、とニュースでは盛んにいっているが、「例年より多い」の「例年」は壊滅的にシラスウナギが減ってからの漁獲量を基準にしているため、資源量が回復傾向にあるとはとてもいえない、と脇谷さん。

「環境省のレッドリストのランクで、ニホンウナギは絶滅危惧IB類とされています。これは特別天然記念物のアマミノクロウサギと同じランク。もしもウナギを食べる文化がなかったなら、絶滅の危機に瀕した生物としてなんらかの保護がされておかしくないレベルです」

 ウナギは親魚から卵をとり、それをまた成魚にするまでの完全養殖の実用技術が確立されていない。いま流通している養殖ウナギも、もとは野生の個体を採集して育てたものだ。

「絶滅に瀕した野生生物が、安価にスーパーや飲食店で売られている。これが日本のウナギ消費の現実です。研究者たちはウナギを守るべく声をあげていますが、その経済的な価値の大きさゆえに、思い切った保護には当分踏み切られないでしょう」

「しかし、消費者や遊漁者が自分で選び取ることは今すぐできる。ウナギの最後の砦である、川にいる個体を釣らないこと。不自然なまでに安価なウナギを買わないこと。ウナギの素晴らしさを知っているのなら、今こそ自制するときだと思います」

 
 
ライター
藤原祥弘

野生食材の採集と活用、生活技術につながる野外活動などを中心に執筆とワークショップを展開。twitterアカウントは@_fomalhaut

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