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なぜ全国の冬山遭難が過去10年で最悪になったのか

(2013.02.10)

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各山域の山岳情報をはじめ、冬山の遭難事例や発生状況など、長野県警のHPでは、登山者にさまざまな情報を提供している(写真=平成24年 冬山情報より)

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富山県警のキャラクター「立山くん」も警鐘をならす。富山県警でも冬山情報を詳細に登山者に提供している

 2月5日付けの朝日新聞によると「昨年12月からの冬山シーズンで、全国の登山者が集中する北アルプスの長野、岐阜両県の山岳遭難(2月4日現在)は計21件、28人。3日には岐阜県で40歳男性が行方不明になった。これで死者・行方不明者は計10人に達し、過去5シーズンと比べて最悪だ。警察庁がまとめた年末年始(昨年12月29日~今年1月3日)のデータでも、全国の死者・行方不明者は13人で過去10年間では最悪という。」(2013年2月5日朝刊:近藤幸夫)
 
 この記事では、経験や技術、知識のない初心者が、冬山に安易に行くようになり、遭難が多発している現状、富山県や群馬県の登山条例のような規制が必要だという議論も起こりかねないと、いう論旨で結ばれている。確かに、これまで、剱岳や谷川岳の登山条例がまさに「防波堤」となって、遭難者をいたずらに増やすことを未然に防いできたのはまぎれもない事実だ。しかし、この条例の存在と、違反すれば、罰金刑が科せられることをどのくらいの人が知っているのだろうか。いや、それどころか、冬山がいかに危険な場所であるか、そして、そのような困難な山やルートにあえて挑むのならば、どの程度の経験と知識を積む努力が必要なのか、ということすら知らない登山者が増えているのではないだろうか?

 遭難者が増えてしまった原因を挙げればキリがない。年末年始の天気の悪さはもとより、登山人口の高年齢化や未組織登山者の問題、山岳会や山岳部などの衰退や、登山ブームをただあおるだけの見識の低い専門誌、さらにはそれをとりまくメディアや業界の営利主義……、と遭難が増える条件・環境は年々悪くなるばかりだ。

 道具やウエアが進化し、情報が豊富になったとしても、それを駆使して山に登る人間が、事故をできるだけ回避するための努力を怠っていたならば、これはどうしようもないのである。そもそも、冬山という場所が、人間にとって過酷な自然であるという危機感すら感じていない人間にとって、自分の能力の限界がどこにあるのかなど知る由もない。冬山の遭難をなくすためには、登山者自身の能力の向上が求められる。自然の怖さを知り、己の能力の限界を見きわめ、その能力の限界を引き上げていくための努力を行なわない人間は、はじめから冬山などに行く資格はない。

北アルプス山域の冬の山岳情報は以下より
富山県警 山岳情報
長野県警 山岳情報

 
 
 

 
 
ライター
滝沢守生(タキザー)

本サイト『Akimama』の配信をはじめ、野外イベントの運営制作を行なう「キャンプよろず相談所」を主宰する株式会社ヨンロクニ代表。学生時代より長年にわたり、国内外で登山活動を展開し、その後、専門出版社である山と溪谷社に入社。『山と溪谷』『Outdoor』『Rock & Snow』などの雑誌編集に携わった後、独立し、現在に至る。

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