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中央高速から見える「緑のラブレター」は、地図に無い町「フジノマチ」への恋文なのか?

(2017.07.11)

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 山岳写真家の三宅岳さんの連載「自然暮らし時々方々山」をスタートします。数多くのガイドブックや山岳雑誌などで撮影を続けるかたわら、炭焼きや山仕事をはじめとする山の生業にも注目し、取材を続ける三宅さん。都心からもほど近い、山間の自然に暮らしながら、写真家としてのまなざしを、いったいどこに向けているのか? 何度かいっしょにいろんなとこに取材に行きましたが、本当に岳ちゃんは、天才なんだか、奇人なんだか・・・そんな人間が多く集まる!? 山間の町からの定点観測です。 

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 アキママ読者の皆様、はじめまして。
 三宅岳と申します。これからしばらくの間、小さな山々に囲まれた、「フジノマチ」で暮らす由なし事を、つらつらと書いていこうかと思っています。

わが町のランドマーク。高橋政行さんの作品「緑のラブレター」は幻の町への永遠の恋文

 ところで、「フジノマチ」ってどこにあるかご存知ですか?
 そんなの知っているよ! という方はともかく、聞いたことも無い、という人も少なからずでしょう。ハイキングを楽しむ人なら、陣馬山の登山口としてご存知の方も多いかもしれません。アートの町、あるいはトランジションや地域通貨、さらにはシュタイナー学校などでご存知の人もいるでしょう。暮らしたい田舎みたいなアンケートでも上位に入ったりします。でも、何となく、薄ぼんやり程度に、知っているという人が圧倒的に多いのではないでしょうか。
 神奈川県の最北部。ちょうど山梨県と東京都に接するあたり。標高千メートルには満たない低山が連なる中山間地。その付近にJR中央線の藤野駅があります。さらに、中央線と並行して走る中央高速には藤野パーキングエリアがあります。というわけで、「フジノマチ」はそのあたりなのですが・・・。
 ところが、地図を眺めても、藤野町という文字は見当たらないのです。血眼になって探しても出てこない。
 そんなこと無いよ、という人もいるかもしれませんが・・・。

*   *

 つい先日、じわじわしとしとと降る雨の夜。家路をたどる道は、コンビニ前を過ぎて、いよいよ重なるような闇の中。忽然、ヘッドライトの光輪に浮かび上がったのが、黒衣色白の女子。右手を挙げてヒッチハイクとなれば、当然ピックアップです。
 東欧のどこぞの国からやってきたという彼女いわく、「ステイをしている藤野は楽しい場所」と(英語でこんな感じ)。で、さかんに藤野を褒めながら、結局彼女とさよならした場所は、隣県山梨の旧秋山村。ここはディファレントのプリフェクチュアーで、フジノではない、といってはみたものの。よくわかっていないご様子。
 確かに、ちょっと手前まではフジノなんだけれどもね・・・

夕まぐれ、茜色に染まる町。やがて幻のごとく闇に包まれる

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 じつは藤野町は相模原市に合併されました。当初、地名として相模原市藤野町という名前だけは残っていましたが、やがて周辺地域とともに「緑区」、という実に味気も素っ気もない、場当たり的な名前となり、地図上から抹殺されたのです。藤野町ラブで育った僕などは、路頭に迷う子羊気分をたっぷりと味わうことになりました。
 つまり、「フジノマチ」という知名度があがったにもかかわらず、その実態はすでに幻なのです。それゆえ、藤野の町外にまでフジノは自在に膨らんだり縮んだり。もう自由自在に形を変える幻の町になっているのです。
 というわけで、変幻自在にして現実的な「フジノマチ」。さて、何が転がっているのかと、ちょっと期待をさせて第一回目は終了なのであります。
(写真・文=三宅岳)

 
 
ライター
Miyake Gaku

(みやけ・がく)写真家。1964年生まれ。東京農工大学環境保護学科卒業。自然と芸術の町・藤野町牧野(現在は相模原市)に暮らし、山や自然を中心に撮影を続ける。これまでに多くのガイドブックなどを執筆撮影するいっぽう『山と溪谷』や『岳人』をはじめ山岳雑誌などで活躍中。

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