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地球を滑る旅 No.2 モロッコ編「アフリカにもスキー場がある? 巡り合った、ツンデレ雪と砂スキー」

(2018.08.21)

カルチャーのTOP

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その国でスキーできるの? という疑問にプロスキーヤー・児玉 毅(こだまたけし)さんと、カメラマン・サトウケイさんとが真正面からぶつかり、スーパー出たとこ勝負で旅を楽しむプロジェクト「地球を滑る旅 〜Ride the Earth〜」の第二弾です。No.1の目的地は中東のレバノン。そこで出会った人と風景、そしてカルチャーが彼らの旅心をグングン加速させてしまいました。今まで、あんまりスキーヤーやスノーボーダーが行ってないようなところに旅したい。ふたりの気持ちはその部分でシンクロし、驚くべき目的地をはじき出したのでした。お話は2013年に遡ります。

 

今回滑りに行った国
国名:モロッコ王国
実効面積:約599500㎢(日本の約1.6倍)
人口:約33850000人(日本の約1/4)
通貨:モロッコ・ディルハム(1モロッコ・ディルハム≒11.62円)
公用語:アラビア語、ベルベル語

アフリカで滑る

 

「ラクダに乗ってスキーに行ってくるよ」

 と告げると、幼い息子たちは目の奥をキラキラさせて、

「いいな〜! 俺も連れて行って!」

 と言った。

「ラクダに乗ってスキーに行く」。なんとロマンのある響きだろうか。世界の果てまで滑れそうな場所を探す旅なのだ

『地球を滑る旅』をシリーズ化することに成功した俺は、本を作るという文化的な目的でムラムラとした滑走欲求をカモフラージュして、見事に家族の理解を得て出発したのだった。それにしても子どもが「いいな〜!」と憧れることと、もうじき40歳の自分が「いいな〜!」と憧れることが全く同じレベルなのは、子どもたちが大人なのだろうか。それとも、俺が幼稚なのだろうか。

 まぁいい。ともかく『アフリカを滑る』というキーワードひとつで、旅の動機としては十分すぎるではないか。

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 成田空港のチェックインカウンターで、ケイは髪をかきむしりながら言った。

「オーバーチャージ14万円だってさ......」

 俺は耳を疑った。3〜4万支払うことは覚悟していたけど、さすがに14万円ともなると "はい、わかりました〜" というわけにはいかない。

 それにしても最近の燃油サーチャージの高さやオーバーチャージの厳しさは、プロスキーヤーとプロカメラマン泣かせもいいところだ。ひと昔前は安売りのエアチケットでも平気な顔をしてスキーを3セットも持って行けたのに、今は荷物を削りに削ってもオーバーチャージを取られてしまうのだ。当然そんな高額は支払えないので、迫真の演技で迫ったら3万5千円にまでまけてくれた。

「ありがとうございます(嘘泣き)!」

 

 

決死のドライブ

 

 粘土で作られた迷宮のようなマラケシュの旧市街を抜けて、サボテンが目立つ荒涼とした平原を南へ40分。俺たちの目の前には行く手を遮る壁のように、長大な山脈がどっしりと横たわっていた。

「こ、これがアトラス山脈か......」

乾いた景色の中に、突如白く長大な山脈が現れる。旅人の間で難所として恐れられるアトラス山脈に、ツルツルのタイヤでヒヤヒヤのドライブ開始!

 標高4,000mを超えるアトラス山脈を越える道路 "オートアトラス" は、レンタカーやバスなどで移動する旅人に、難所として知られている。しかし、俺たちはレバノンでの経験がある。テロや紛争の脅威や信じられない交通マナーに怯えながらも、2週間のロードトリップを完遂したのだ。こんな道、何て事はない! ......。と言いたいところだけれど、俺は、緊張を通り越して、口唇を紫色にしながら運転していた。ヘアピンカーブの急勾配な細道が連続し、舗装が半分以上剥がれていてガタボコだ。そして、何より不安なのは、いつ雪道になるかという事だった。

「レンタカーでのスキートリップには、スノータイヤが必須だ!」

 と当たり前のことを叫びたいのだが、どうやら、この国にはスタッドレスタイヤもタイヤチェーンも存在しないらしいのだ。先日、スキー場の基地となる観光都市のマラケシュで一日中探し回った挙句、ある車整備会社の社長に "そんなもの、あるわけないだろ。ここはアフリカだぞ!" と言われ、妙に納得して諦めたのだ。途方に暮れた俺たちにできる事は、新雪が降らないよう、神様に祈ることしかなかった。

広大なアフリカの大地で、こんなにも密集して人が住む必要があるのだろうか。レンタカーで旧市街に迷い込んだ時は、二度と出られないかと思った

  • 現代的なものと、昔から変わらないものが混在する国だ。日本から来た俺たちにとって、こういうのは大歓迎
  • 世界のどこに行っても子供は可愛く、絵になる存在だ。スピード違反には異常に厳しい国だけど、他の交通ルールはゆるゆる

 そんな不安しかない俺たちの車の前にフラフラと走る1台のバイクが見えてきた。よく見ると、50ccの原付バイクで、しかも2ケツじゃんか!

「アホか!」と思いながらも、なんだか根拠のない自信が湧いてくるのを感じていた。延々と続くかに思えたヘアピンカーブが終わり、突如平坦な樹林帯に変わった。そして、その樹林帯を抜けたとき、俺たちは思わず叫んでしまった。

「うおおおぉぉぉ! !」

 赤茶けた土に目が慣れていた俺たちに、その色彩は眩しく鮮烈だった。たっぷりと雪をまとった巨大な雪山が、デンと鎮座していたのだ。目を凝らすと、Tバーらしきものが見える。その奥にはリフトがかかっており、それは何と巨大の山の頂へまっすぐに伸びているではないか!

「わあああぁぁぁ ! !」

 口をついて出てくるのは、言葉ではなく叫びばかりだった。

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ライター
Akimama編集部
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